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HSP働き方戦略室|明日から使える処方箋をあなたに。

HSPの人はなぜ繊細で敏感なのか?新しい研究やよくある誤解も

私(ぽん乃助)
今回は、HSPの人はなぜ繊細で敏感なのかというメカニズムに迫ります。

 HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまると言われる、繊細で敏感な気質の人を指します。(HSPの詳しい解説は、こちらからご覧ください。)

 そして、HSPの人は生まれつきの気質がゆえに、”生きづらさ”を感じやすいといわれています。

 HSPについては、2020年4月11日に日本テレビの『世界一受けたい授業』で放送されるなど、その知名度はさらに上がってきています。

 その一方で、SNSなどを見ていると「HSP」という言葉が色んな形で使われており、本来の解釈以上の曲解も多くみられるようになりました。

 なので、今回は原点に戻って、「HSPの人はなぜ繊細で敏感なのか?」ということについて、考えていきたいと思います。

 このメカニズムについては、本ブログでは詳しく触れてきませんでしたし、一般で売られている著書等でも触れられることは多くありません。

 また、なぜ「正しい理解が大事なのか?」ということについても、お伝えできればと思っています。

 今回の記事執筆にあたっては、HSPの日本人研究者の串崎真志さんの著書『繊細な心の科学』を参考にしています。

(*)動画版も作成していますので、記事を読むのが大変な方は、以下YouTubeよりご覧いただければと思います!




HSPの人はなぜ繊細で敏感なのか?

(1)HSPの人が繊細で敏感な理由について

 HSPの人は、大勢の人混みで疲れやすいと言います。

 そのほか、人の気分に左右されやすかったり、繊細な心がゆえに、仕事や私生活で”生きづらさ”を感じることがあると言います。

 じゃあ、この心の繊細は、どこから来るのでしょうか?

 それは、人間に起こる「情動伝染」という言葉がキーワードになります。

 著書には次のとおり、書かれています。

心理学では、気持ちが人から人へ伝わる現象情動伝染(emotional contagion)と呼んでいます。

(中略)

情動伝染は共感(empathy)の一部です。共感のなかの、「相手と同じ気持ちになる」という側面を指すのです。

(中略)

そして、情動伝染が高いと、人にものすごく気を遣うようになります。そして、人に合わせることが習慣化してしまいます。それゆえ、繊細な人は、人の顔色をいつも伺って、窮屈な思いをしながら暮らすという、生きづらさを抱えている場合が多いのです。

(中略)

もう一つは、情動伝染が高いと、人からの評価を過剰に気にするようになります。「正しくできないとだめ」「人から完璧な評価をもらう以外は恥ずかしい」といった気持ちにとらわれがちで、批判に傷つきやすくなってしまいます。大多数の肯定的な評価よりも、ごく少数の否定的な評価に目がいって、「やっぱり自分はだめだ」と落ち込みます

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 恐らく、HSPの方は、まさに自分のことだと思われたのではないでしょうか?

 どうやら、これらは共感の一種である「情動伝染」の働きが活発だからだということがここからわかります。

 じゃあ、どうして、HSPの人は「情動伝染」が活発なのか?

 著書には次のとおり、書かれています。

アメリカの心理学者ビアンカ・アセヴェドらが行った研究です。手続きは少し複雑ですが、結果は、繊細な人であるほど、恋人の悲しい顔を見ているときに(見知らぬ人の悲しい顔を見ているときに比べて)、島皮質という脳の部位が活動していました。島皮質は脳の左右に二つあって、いろいろな役割を果たすのですが、その一つとして体の痛みを感じるときに活動します。それと同時に、自分の心の痛みや人に共感するときにも活動します。それゆえ、島皮質は共感の脳と呼ばれます。

(中略)

要するに、情動伝染は単なる気持ちの(主観的な)問題ではなく、脳も実際に相手の痛みをしっかり捉えている、ということなのです。

こうして脳の裏付けが得られたことで、繊細さの研究もどんどん進んでいます。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 心は脳にあると言われることもありますが、まさに繊細さを司る島皮質という部位が脳に存在し、繊細な人ほど島皮質が活発であったということが分かります。

 つまり、自分の繊細さは、自分の脳の働きから生まれているということなのです。

 それでは、「繊細さ」のメカニズムはわかりましたが、「敏感さ」のメカニズムはどうなのでしょうか?

 著書には次のとおり書かれています。

じつは、人に対する繊細さをもっている人は、音・光・匂いなどの感覚も敏感だと言われています。このことを指摘したのは、アメリカの心理学者エレイン・アーロンです。彼女は、人に対する繊細さと、諸感覚の敏感さの両方をもっている人を、ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)と呼びました。子どもの場合はハイリー・センシティブ・チャイルド(HSC)といいます。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 そう、つまり、繊細さと敏感さは異なる概念であるものの、その2つの関連性について、アーロン氏は指摘したということなのです。

 服のタグが肌に当たるのがいや、蛍光灯が眩しい、騒音で疲れる、匂いが苦手、寝つきが悪い…など。

 HSPの人は、感覚が敏感なので、人間関係の繊細さに加えて、こうした敏感さによる生きづらさも感じるのです。

 まとめると、「繊細さ」と「敏感さ」は違いますが、「繊細さ」と「敏感さ」は関連するということ。

 そして、「繊細さ」は、自分の脳の働きによって生まれているということ。

 この2つが、ここから分かるのではないでしょうか。

 

(2)嗅覚と皮膚感覚も理由のひとつか?

 さて、HSPの繊細さは、共感の一種である「情動伝染」が活発であることから生まれていると述べました。

 著書では、「情動伝染」の働きについて、様々な研究を背景に、次のとおり書かれています。

情動伝染の基礎メカニズムは、自動的に、相手と同じ生理状態になることだと考えられています。心理学では、これを同期(synchronization)と呼びます。人と人のあいだには、さまざまな同期現象が確認されています。例えば、心臓の鼓動(心拍)、脳は、皮膚の温度、手の汗(皮膚電気活動)など、自分で調節できない生理的な活動が、目の前の相手と同期するのです。

(中略)

生物はおそくら、個体同士のリズムを合わせる性質を基本的にもっていて、人はそれを使って気持ちを伝えいていると考えられます。ただし、なぜリズムが合うのかは、まだ謎です。

(中略)

HSP=情動伝染の高い人です。そして、情動伝染の高い人は、生理的な同期が生じやすい人です。つまり、HSPは身体感覚や生理状態の変化に敏感な人であり、それを使って共感的な能力を発揮していると考えられます。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 HSPというと、スピリチュアル分野と重ねて語る人もいらっしゃいますが、まさにこの「同期」の現象がなんとなく不可解だからなんだと思います。

 この「同期」現象の具体的メカニズムは分かっていないものの、心理学分野としても、実際にこういう現象が起こるということは、様々な研究で分かっているわけです。

 そして、この現象のもととなる「情動伝染」が、HSPの人は活発だからこそ、相手の気持ちが自分に入り込みすぎるといった、「繊細さ」につながるのではないかと考えられるわけです。

 著書では、様々な研究をもとに、さらに興味深い仮説が述べられていました。

人と人は、知らないあいだに匂いでコミュニケートしている。ただし、意識的には気づいていない。このことが、わかってきたのです。

(中略)

誰か怖い体験をした人の匂いを嗅ぐと、脳は即座に「何か危険だぞ!」と感じて、険しい表情を作るように、無意識的に表情筋に指示するのです。

このほか、面接試験を受けた人の汗を嗅ぐと、眼輪筋の動きが増大して、目を見開くような表情になった、という研究もあります。

(中略)

気持ちが匂いで伝わるとしたら、共感的な人は鼻がいいのでしょうか。どうやら、そのようです。

イギリスの心理学者デイヴィット・ウィルキンソンらによると、共感性が高い人ほど、二つの匂いを正確に区別することができました。

(中略)

ここからは、私の仮説です。

情動伝染と匂いの処理は、どちらも無意識的な、生理的な現象が基礎になっています。

もし気持ちの変化が(汗などの)匂いの変化に現れ、共感性が高い人の嗅覚が鋭いとしたら、HSPの情動伝染(の一部)は匂いによって生じているのかもしれません。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 実験内容は省略してしまいましたが、実験の過程で使われた「匂い」は、においがあるかどうか分からないレベルであったものの、研究では脳の反応が生まれたことが示唆されたそうです。

 匂いで、人の気持ちが伝わりあうというのは非常に面白いですし、著書の仮説のとおり、嗅覚の鋭さがHSPの人の繊細さの原因になっている可能性があると考えると、非常に興味深いですよね。

 そして、著書ではさらに、このような仮説も述べられています。

最近の研究で、皮膚そのものに、さまざまな感覚を処理する能力があることがわかってきました。

もちろん皮膚の諸感覚は、感覚神経(末梢神経)から脊髄を通して脳で処理されます。これは従来からわかっていることですが、例えば触角は、皮膚が押されると、メルケル細胞(メルケル触盤 Merkel discs)がそれを感じて(細胞内の電位が変化し)、その興奮が感覚神経を通して脳にその興奮が感覚神経を通して脳に伝達して生じます。つまりメルケル細胞は、皮膚にある触覚センサーと言えます。触角と同様に、皮膚(表皮・真皮・皮下組織)には、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の受容体と感覚神経があります。

しかし、最近わかったことは、皮膚に届いている感覚神経の話ではありません。表皮(皮膚のもっとも表面0.2ミリ)の角化細胞(ケラチノサイト Keratinocyte)の話です。角化細胞は最終的には細胞死して、垢として剥がれ落ちる細胞です。

皮膚科学者の傳田光洋氏によると、角化細胞には、圧力、温度、匂い、そしておそらく光、音などの環境の刺激に直接反応する受容体(たんぱく質)があるそうです。そして、カルシウムイオンの変化が細胞間に広がることで、環境の変化を感覚神経まで伝えていることがわかってきました。

(中略)

傳田光洋氏によると、オキシトシンやコルチゾールなどのホルモンの生成も、わずかながら角化細胞で可能なようです(通常、オキシトシンは脳の下垂体、コルチゾールは副腎皮質から分泌します)。例えば、空気が乾燥していると、角化細胞はコルチゾールを生成します。コルチゾールは、別名ストレスホルモンといって、環境の異変に対して分泌されるものです。

(中略)

それだけではありません。角化細胞の変化は、腸に送られ、腸内細菌叢の状態に影響することもわかってきました。

(中略)

ここからは私の想像です。

皮膚の角化細胞には、匂い(化学物質)の受容体があります。現在のところ、ドイツのダニエラ・ブッセらが報告している、白檀(sandalwood)の香りに反応する嗅覚受容体遺伝子(OR2AT4)しか見つかっていないようです。

もしかしたら、皮膚には、人の恐怖やストレスの匂いに反応する受容体があるかもしれません。もしそうなら、情動伝染(の一部)が皮膚を通して生じている可能性はないでしょうか。気持ちの処理が、皮膚から出発して腸内細菌に影響し、脳に影響する、という経路も考えられるでしょうか。

情動伝染の高さは、繊細な皮膚に由来する?本当かどうかはまだわかりません。

経験的には、HSPは、敏感肌のような繊細な皮膚をもっている人が多いように思います。

引用(一部改変):串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 この仮説についても、非常に面白いと思いました。

 私は、昔からずっと、敏感性乾燥肌だったのですが、HSPとは関係ないと思っていましたが、もしかすると関係があるのかもしれないと思いました。

 あくまで仮説ベースのお話ですが、当事者としてはなんとなく納得できるような内容だと思ったので、紹介いたしました。

 

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HSPに関する新しい研究やよくある誤解とは?

(1)HSPが苦手な人のタイプとは?

 最近は、HSPの認知が広がり、「HSPあるある」のように個人的な解釈が先行する事例がみられるようになりました。

 その一方で、専門家によるHSPの研究の動向が気になっている人も多いと思います。

 そこで、著書を参考に、HSPに関する新しい研究の情報などを紹介していきます。

 まずは、「HSPが苦手な人のタイプは?」というお話です。

 これは、研究の世界では次のとおり考えられているそうです。

繊細な人=情動伝染の高い人には、三種類の苦手な相手がいるといわれています。まず、自分のことばかり話す人(自己愛的な人)、次にわけもなく怒る人、そして話の止まらない人です。特に怒っている人は大の苦手。自分が怒られていなくても、誰かが怒られているのを見るだけで、自分も痛みを感じ、なんとも言えず辛い気持ちになるのです。

引用(一部改変):串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 

(2)HSPは5人に1人なのか?

 HSPの人は、5人に1人いるということが、定説になりつつあります。

 ただ、この点については、直近に行われた調査では、異なる見解が示唆されています。

 著書には次のとおり、書かれています。

エレイン・アーロンとアーサー・アーロンによる当初(1997年)の報告では、人口の約五分の一を占めるとされていました。イギリスの心理学者マイケル・プルースらが、新しく(2018年)大規模な調査を行ったところ、サンプルによって異なるのですが、子どもで20パーセントから35パーセント、大学生(19歳)で26パーセントほどいました。したがって、HSPは4人に1人の割合で存在すると推測されます。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 HSPは「少数派」とよく言われますが、4人に1人ということになると、「少数派」とはなかなか言いづらい割合だと考えられます。

 その一方で、HSPの人によっても繊細さ・敏感さに差異があると思われますが、同じく”生きづらさ”を抱えているけど自分がHSPだとわかっていない人は、多数いるということも言えるのではないかと思います。

 この点については、以前に私も考察したことがありますので、気になる方はぜひ、以下のリンクもあわせてご覧ください!

 

 

(3)誤解されやすいHSPの共感能力とは?

 SNSなどで、「HSPの人は直感的に、相手の気持ちが見抜ける」ということが言われることがあります。

 ただ、この意見は100%正しいとは言い切れません。

 HSPの人は、共感の一種である「情動伝染」が活発だと述べてきました。

 ただし、共感には別の側面もあるのです。

 著書には次のとおり、書かれています。

共感には、情動伝染(情動的共感)のほかに、相手の立場や主張をきちんと想像して理解するという、視点取得(認知的共感)もあります。情動伝染と視点取得は関連する部分もありますが、情動伝染と視点取得では、それを処理する脳の部位が少し異なります。大まかに言うなら、情動伝染は「感じる」脳を、視点取得は「考える」脳を使っています。

視点取得の能力は、相手の立場や主張を考える練習(知識や教育)、自分の経験を基にした想像力、そして年齢によって伸びていきます。

HSPは情動伝染は高いのですが、視点取得が高いとは限りません。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 そう、つまり「相手の立場を踏まえて相手の気持ちを考える」というのは、必ずしもHSPの才能ではないということです。

 そして、著書には研究の内容として、次のとおり書かれています。

HSPは本当に直観力が高いのでしょうか。

私の研究では、次のように調べてみました。まず、近くに座っている人同士で見知らぬ二人組を作り、相手が今どれくらい孤独でさびしそうか、お腹が空いてそうか、疲れているように見えるかを、会話せずに直感的に想像して、七段階で評定しました。次に、自分がいまどれくらい孤独・空腹・疲労を感じているかを、七段階で自己評定しました。

この差の絶対値は、相手の気分をどれくらい正確に感じ取ったかを表します。例えば、相手の疲労感を2と推測し、相手の実際の疲労感が6だった場合、4がそのずれになります。もちろんゼロが正解です。

結果はどうだったのでしょう。HSPであるほどゼロに近い、となればよかったのですが、そうはなりませんでした。その代わり、HSPであるほど、相手の孤独感を大げさに感じ取っていることがわかりました。例えば、相手の実際の孤独感が6だった場合、HSPは相手の孤独感を(実際よりも大きく)7と推測するような傾向があったのです。

HSPの直感は、方向性は正しいのですが、少し大げさに(誇張して)感じ取る傾向があるようです。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 HSPの人にとっては、経験があると思いますが、「この人怒っているかもしれない」と表情を見て、過度に怖気ついてしまうことがあると思います。

 でも、実際はそこまで怒っていないということも多く、日々過度に気を遣って生きてしまうのは、相手の感情を大げさに感じ取ってしまうからなのかもしれません。

 「HSPの人は直感的に、相手の気持ちが見抜ける」というのは、100%正しいとは言い切れないというわけです。

 

(4)HSPは病気なのか?

 HSPについて、昔から知っている人は既に理解している人も多いですが、HSPは病気ではありません。

 「HSPは治せますか?どこで診断できますか?」というご意見をいただくことも多いのですが、病気ではないため治せないですし、Web上などのセルフチェックで自己診断するものであり、医師などから診断されるものではありません。

 この点についても、著書では、言及されています。

ここで、少し注意してほしいのは、HSPは病気ではないということです。したがって、診断基準もないし、人をHSPと非HSPに二分するものでもありません。マイケル・ブルースの研究は、統計学を使ってグルーピングを試みた場合、HSPの高い人が何パーセントぐらいいるかを試算したものでした。

HSPは、心理学的な性格(気質)の一つです。その傾向の高い人から低い人までが、連続線上に、山形のグラフで分布すると考えられます。研究では便宜上、その傾向の高い25パーセントの人をHSP群とすることもありますが、絶対的な基準ではありません。ここからがHSPで、ここからがHSPでない、といった基準もないのです。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 

(5)HSPの人は美的感覚・想像力に優れるのか?

 「HSPの人は芸術の才能がある」と言われることが多いです。

 この点についても、言及がありました。

美的感受性も、HSPの特徴の一つだと考えられています。しかし、さまざまな研究によると、感覚の敏感さ(「大きな音は好きではない」など)と美的感受性のとの相関は、さほど高くないようです。たぶん、感覚が敏感なだけでは、その場の空気に圧倒されたり、気持ちが不安定になったりして、物事を深く受け止める余裕がなくなるのでしょう。敏感な感覚をうまく活かせるようになるには、何か工夫や練習がいるのだろうと、私は思っています。

ただし、いったん敏感な感覚をうまく活かせるようになると、創造性も自然に開花していくようです。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 つまり、敏感な感覚を芸術に生かすためには、感覚をコントロールする工夫や練習が必要であり、そういった努力なしでは芸術能力は高くならないということが示唆されています。

 その一方で、敏感な感覚をコントロールできれば、創造性も開花させやすいと言えます。

 そして、著書では次のような言及もありました。

芸術、音楽や起業家など、想像力・想像力が必要な職業で、本領を発揮する人は多いと思います。

HSPの人は、持ち前の想像力・創造力を使って、ニッチ(隙間)な人生を開拓するのがうまいと思います。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 HSPの人は、人の顔色をうかがってしまうため、どうしてもマジョリティを選択したくなることも多いと思いますが、それで生きづらさを感じる人も多いのではないかと思います。

 そう考えてみると、時には『嫌われる勇気』をもって、ニッチ(隙間)を突いていく意見や行動力を持つことで、HSPの能力が生かせることがあると言えるのではないかと思います。

 以前、ベストセラーとなった著書『嫌われる勇気』については、HSPの方にすごく参考になると思い、要約記事を作成したことがありますので、気になる方はぜひ、以下のリンクからご覧ください!

 

 

(6)運動でストレス発散ができるのか?

 一般的に運動は気晴らしになると言われますが、HSPにとってはどうなのでしょうか?

 この点については、著書の中で次のような言及がありました。

HSPは、疲れやすく、同じ環境で人と同じようにできない、という生きづらさがあります。雨宮怜・坂入洋右の興味深い研究を紹介しましょう。大学生に大縄跳びをやってもらい、その前後で気分がどう変化したかを尋ねました。その結果、多くの大学生は運動後に気分がすっきりしたと報告しました。ところが、HSPの大学生は逆に気分が不安定になったのです。このことは、HSPにとって、運動が気晴らしにならない可能性を示唆します。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 これも、興味深い考察ですよね。

 ちなみに、これも個人差があると思っていて、私は運動するまでは気が向かないタイプですが、運動することはストレス発散につながります。

 だけど、それは個人競技や一人でコツコツできる運動に限るもので、私は他人と競ったり、団体競技などは過度なプレッシャーを感じて苦手なタイプです。

 この点については以前、本ブログで考察したことがありますので、気になる方はぜひ、以下のリンクからご覧ください。

 

 

(7)HSPは遺伝するのか?

 今の心理学においては、性格分析は、どういう傾向があるのかという「特性論」で考えることが主流になっているそうです。

 例えば、「MBTI診断」や「内向型/外向型」など、自分の性格を分類する「類型論」は一般的には好まれているものの、正確性の観点や偏見を助長するという観点から、心理学の分野では好まれていません。

 「特性論」で最も有名な性格分析は、「ビッグ・ファイブ」です。

 HSPについても、「ビッグファイブ」に照らし合わせた研究も進んでいます。

 著書には次のとおり、書かれています。

ビッグ・ファイブでは、次の五つのスペックの組み合わせで性格を表します。

・気持ちの不安定さの程度(神経症傾向)

・社交的で周りの人と馴染みやすい程度(外向性)

・感情を制御したり、衝動を我慢したり、物事をしっかり考える程度(統制性)

・利他的で人を励ますのに長けている程度(協調性)

・他の人にないような発想をする程度(開放性)

(中略)

イギリスの心理学者フランチェスカ・リオネッティらは、690名のデータをまとめて、HSPの子どもは神経症傾向が高く、HSPの大人は神経症傾向と開放性が高い、と結論づけています。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 以前、私のブログ記事でも、HSPとビッグ・ファイブを比較検証したことがありましたが、実際にアカデミックの場でも深く研究されており、HSPについて、ビッグ・ファイブの傾向で説明できるというわけです。

 また、これを踏まえ、HSPの遺伝について、著書では次のとおり仮説が述べられています。

アメリカの心理学者エリザベス・プラナルプとヒル・ゴールドスミスは、生後六ヶ月の赤ちゃん990人を観察しました。

(中略)

その結果、統計学を使ってグルーピングを試みたところ、赤ちゃんは、次の四つの類型に分かれることがわかりました。

・穏やかな子…否定的な感情表現が平均より少ない。36パーセント

・気難しい子…怒りと悲しい表情が平均より突出して多い。19パーセント

・活発な子…興味関心と活動レベルが平均より高い。11パーセント

・すべてが平均的な子…34パーセント

ここでは、気難しい(怒りと悲しい表情が平均より突出している)とグルーピングされた赤ちゃんに注目しましょう。

(中略)

追跡調査したところ、生後12ケ月の時点でも、このタイプの子供が15パーセントいました。

この研究が結論づけているわけではないのですが、私は、この15パーセントの赤ちゃんの気難しさが、HSPの繊細さにつながっていると考えています。

(中略)

エリザベス・プラナルプらの研究では、双子の比較もしています。一卵性の双子は(二卵性の双子に比べて)、いっぽうが怒りや悲しみの表情が多ければ、他方もそうでした。一卵性双生児は同じ遺伝子をもっているので、このことは、否定的な感情の多さに、遺伝が影響することを示唆します。

ただし、遺伝の影響力の割合を計算したところ、0.49(49パーセント)だったので(つまり残りは環境の影響力)、遺伝がすごく影響するわけではありません。

どんな性格にも遺伝の影響はあります。0.49は、性格における遺伝の影響として、ふつうぐらいの数値です。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 上記を踏まえると、HSPの遺伝性はそこまで大きくはない(中程度だと)、考えられるのではないかと思います。

 仮説の段階ではありますが、この点についても、もっと詳しく研究されると興味深い見解も生まれてくるのではないかと思います。

 

(8)HSPの性格(気質)は変えられるのか?

 心理学の世界では、性格は変わると言われることもあります。

 著書には次のとおり、書かれています。

性格は相手や場面によって変わるのがふつうです。これを性格の状況論といいます。

(中略)

心理学者のなかにも、性格の状況論を支持する人はたくさんいます。

イギリスの心理学者ブライアン・リトルは、私たちは内向性のように、特定の性格特性をもって生まれるけれど、自分にとって重要な事態では、その特性を超えて、例えば外向的にも行動できるのだ、といいます。そういう、変わりうる性格を「自由特性」と呼びました。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

 HSPについては、これまで生まれつきの気質で、変わらないと言われてきました。

 だけど、私はこの説を聞いたとき、自分にとって大切なことに立ち向かっているときは、HSPの気質(性格)も変えることができるのではないかと思いました。

 もし、気質(性格)を変えることができるのであれば、自分の可能性は無限大に広げられることになります。

 以前に、HSPの人が自分を変えて幸せに生きる・働いていく方法について、本ブログにて考察記事を綴ったことがありますので、興味がある方はぜひ、ご覧ください。

 

 

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なぜ、HSPを正しく理解する必要があるのか?

(1)HSPを正しく理解する必要性

 今回は、HSPのメカニズムや研究の動向について、熱を込めて述べてきました。

 恐らく、HSPのメカニズム自体は興味がない人も多いと思います。

 私自身も、以前までHSPの”生きづらさ”さえ改善することが一番大事であり、HSPのメカニズム自体を理解することはそこまで必要がないと思っていました。

 だけれども、HSPの概念が広がってきた今だからこそ、適切な理解が必要性が出てきたと私は思っています。

 その理由は、次のとおりです。

【HSPを正しく理解する必要があると考える理由】

①HSPの研究よりも、概念が先行してしまったことにより、人それぞれの独自解釈が許されてしまっている。
→そのため、カルトや悪徳商法の勧誘の用語に使われてしまっている現状がある。
→本来HSPとは関係のない、ネガティブな「HSPあるある」が流行っている現状がある。

②「非HSP」という言葉も流行ってしまい、本来はグラデーションである概念であるのに、HSPとそうでない人に分断するイメージが強くなってしまっている。
→そのため、HSP界隈の中でも「この人はHSP、この人はHSPじゃない」といったようなことを聞くようになった。

 これまでHSPの方々とお話してきましたが、「自分はHSPだったんだ」と気づく人の多くが、仕事や私生活での生きづらさをきっかけに気づく人が多いです。

 それで、「自分はHSPだったんだ」と気づけることで、自分の生きづらさの理由が分かり、安心感につながる人も多いと思います。私もそうでした。

 ここまでは、いいんです。

 だけど、現状は、弱みに付け込んで、カルトや悪徳商法の勧誘に使われている例もあります。

 そして、人間はネガティブバイアスと言って、ネガティブな要素に引き込まれやすい性質を持っています。

 なので、本来HSPとは関係のないネガティブな「HSPあるある」を見ると、「HSPだから私はこれもできないのか…」と、自分の可能性を狭めてしまう例もあります。

 さらには、SNSなどで、「この人はHSP、この人はHSPじゃない」といったことを聞くこともあります。

 こういった事例は、おそらく、HSPの人が生きづらさを乗り越えることから遠ざけてしまうのではないかと、危惧しています。

 だからこそ、HSPの概念が広まってきた今だからこそ、今一度心理学の観点から、HSPについて考えてきました。

 

(2)生きづらさを抜け出す方法について

 私は、過去に一度うつ病を患っています。

 うつ病を患っていた期間は、本当にツラいものでした。

 そして私は、自分の繊細で敏感なHSPであったことも起因して、うつ病になったのではないかと考えています。

 私が味わってきた苦しい経験については、YouTubeで簡単にお話したことがあります。(気になる方は、以下の動画リンクをご参照ください。)

 だからこそ、もし、HSPの仕事や私生活での生きづらさを解決することができれば、うつ病などの精神疾患に至る人を減らせるのではないか。

 そして、幸せに働いていける人や幸せに生きていける人が増えるのではないか。

 そういう思いで、ブログやTwitterで発信を続けてきました。

 著書には、次のとおり書かれています。

HSPは、繊細な性格(気質)をもつ人のことです。生きづらさはあるものの、治療が必要なものではありません。

しかし、そのHSP気質を「一階部分」とするなら、二階・三階部分にさまざまな症状や問題行動が「乗ってしまう」こともあります。例えば、一階部分がHSP、二階部分が不安症、三階部分が不登校などのように、HSPをベースに、さまざまな症状や問題行動が現れるのです。逆に言えば、不安症・抑うつ症状などの背景に、HSP気質があることも見受けられます。

これらの場合、一階・二階・三階それぞれに対応することが重要です。二階・三階については、医学的な処置や心理師による指導が必要なことも多いのです。

(中略)

実際、HSPであるほど、抑うつや不安が高いことが、多くの研究で確認されています。

(中略)

私は、正確な割合はわかりませんが、不登校の一定数は、HSPがベース(一階部分)にあるのではないかと感じています。前述したように、学校は緊張した場面や切迫した場面が多い場所です。そしてHSPは、もともと集団に馴染みにくい性質があります。特に思春期は、HSPの繊細さがいっそう高くなりやすいのです。すなわち、HSPの子どもには、不登校になりやすい条件が揃っているのです。

引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房

【上記画像はクリックすると拡大表示されます】

 そう、ここに書かれていることを踏まえると、例えば生活の中で生きていくのに支障がある症状などが発生している場合は、HSP(一階部分)の範疇で収まる話ではなく、医師や心理士に相談する必要がある症状や問題行動(二階部分・三階部分)が発生している場合があるというわけです。

 逆に言えば、HSP(一階部分)をきちんと理解し対処することが、症状や問題行動(二階部分・三階部分)の予防につながると私は思っています。

 ここまでも説明したとおり、HSPは性格分析の傾向で表すことができます。

 もし、HSPが一つの性格の傾向であれば、私は心理学の知識を応用すれば、HSPの生きづらさを乗り越えられると信じて、私が実際に試してみて有効だった心理学テクニック(セルフケアなど)をお伝えしています。

 ただ、一つ言えるのは、私が発信していることが、すべてのHSPの人に有効ではありません。

 というのも、私もしかり、人間はHSPだけがベースではないからです。

 その証拠に、HSPの中であっても、外向型のHSP(HSS型HSP)と内向型(非HSS型HSP)といったように、分類がなされることもあります。

 私は、一人ひとりの個性は、HSPの一言で当てはめられるほどシンプルなものではないと思っています。

 だからこそ、私がこの記事で伝えたいことは、次のことです。

 HSPは自己理解のヒントであり、HSPとインターネットなどで検索すれば、自分にとって生きづらさを乗り越えるための鍵(心理学情報)などを見つけやすくなります。

 ただ、一人ひとり個性は違うので、必ずしもインターネットなどに書かれている情報が、あなたに合うとは限りません。

 だからこそ、色んな人から生きづらさを乗り越えるヒントを聞いてみて、良いと思ったことは実践して、悪いと思ったことは反面教師にする。

 このトライ&エラーが、自分でHSPの生きづらさを乗り越える方法なのだと、私は考えています。

 以前にこのことに関連して記事を書いたことがありますので、気になる方はぜひ、以下のリンクからご覧ください!

 

 

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おわりに

 さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか。

 今回は、HSPのことがテレビに取り上げられたことをきっかけに、改めてHSPのことを考え直したいと思い、記事にしてまいりました。

 また、私自身が、HSPの方々に発信する理由を問い直すために、整理したという側面もあります。

 これまで、先述したどおり、私がブログやTwitterで発信する理由は、HSP(一階部分)の生きづらさを改善し、症状や問題行動(二階部分・三階部分)を予防するということが、一つにあります。

 ただ、どうしてもブログやTwitterでの一方向での発信では、限界を感じてきたというのが正直なところです。

 というのも、先ほど申し上げたどおり、HSPの人の中でも色んな個性の方がいらっしゃるので、例えば私が発信して、Aさんには参考になっていたとしても、Bさんには逆効果になる場合もあります。

 また、どうしてもHSPを考えるにあたって、HSP(一階部分)と症状や問題行動(二階部分・三階部分)は切っても切り離せない関係です。

 ただ、私のような一般人ですと、問題行動(二階部分・三階部分)に言及することに限界があります。

 そのため、今はHSPという概念にとらわれず、心理学や精神医学の勉強をしているところでございます。

 そして、一人ひとりに合わせた提案ができるように、カウンセリングの資格を今年中に取得できるように努めているところです。(コロナウイルスの影響もあり、難しいかもしれませんが…)

 引き続き、本ブログでは、いろんな観点から”生きづらさ”を乗り越えるための情報を発信していければと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

 さて、最後になりますが、HSPについて適切に理解したい方は、今回ご紹介した著書『繊細な心の科学ーHSP入門』を読むことをおススメします。

 専門的な内容が多いですが、かなりわかりやすく書かれており、専門家である著者の串崎さんの優しさと思いを感じる本でもあります。

 HSPを正しく理解するために、最もわかりやすい本といっても過言ではありませんし、今日ご紹介したのは著書の一部分ですので、ぜひ本著をご覧いただければと思います。

 ということで、今回はこの辺で終えたいと思います。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 また次回も、よろしくお願いいたします!

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プロフィール

 

名前:ぽん乃助

 

社会の荒波に揉まれ、猫の皮を被ることになった繊細な人間。世の人間たちの間では、繊細な気質のことをHSPと謳って色んな情報が溢れる中、猫の穿った目線で処世術のヒントっぽいことを呟く。猫パンチのない、穏やかな世界が好き。箱の中で生死を待つのではなく、箱の外に出ることを選択するシュレーディンガーの猫になりたい。

 

 

 

 

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