HSPの人が精神疾患に罹りやすい理由とは?予防や回復のヒントも
HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまる、繊細で敏感な気質の人を指します。(HSPの詳しい解説は、こちらからご覧ください。)
そして、私もHSPのひとりです。
さて、本ブログをご覧になっている皆さんの中には、心理学やメンタルケアに関する情報を本やインターネットで調べている時に、初めてHSPという概念を知ったという人が多いのではないでしょうか。
私も、HSPという概念を知ったのは、心理学の本を読んでいるうちに知りました。
私がそもそも心理学の分野に興味を持ったきっかけは、以前に会社でパワハラを受け、うつ病になったことにあります。
Twitterでも、HSPの界隈では精神疾患をカミングアウトされている方を散見しますが、恐らく精神疾患がきっかけで心理学の分野に興味を持ったことで、自分がHSPだと知った人も少なくないのではないかと思います。
HSP自体は病気ではありませんが、自分がHSPだと思っている人の多くが、精神疾患にならないまでも、日々の生活や仕事で「生きづらさ」や「不安」を抱えているのではないかと考えています。
そして、その最たる例が精神疾患に罹ってしまうことだと思っており、私はHSPの人が精神疾患に罹りやすいのではないかという仮説を立てています。
本ブログには、私自身のうつ病でツラかった経験も踏まえ、一人でも多くの人に精神疾患の予防や回復につながればという思いも込めています。
そこで今回は、HSPの人が精神疾患に罹りやすい理由を考察するとともに、精神疾患のサバイバル体験を集めた著書『私はこうしてサバイバルした』をもとに予防と回復のヒントをお伝えしていきます。
ぜひ、最後までご覧ください!
この記事の目次
HSPの人が精神疾患に罹りやすい理由とは?
HSPという概念は、心理学に関する情報を本やインターネットで集めている時に、知る人が多いのではないでしょうか。
最近は、HSPが一般のニュースでも取り上げられる機会が増えましたが、ちょっと前までは、心理学に少しでも興味が無ければたどり着けない情報でした。
Twitterでも、HSP界隈の方々を見てみますと、心理学に興味を持っている人が多く見受けられます。
ただ、心理学の情報は大衆化されており、通常売られている書籍の内容としては自己啓発本に近い性質を持っているように思えます。
2015年のモントリオール大学の研究によると、自己啓発本をたくさん読む人はそうでない人に比べて、メンタルが弱い傾向にあるということが分かっています。
つまり、HSPという概念を知っている人は自己啓発(心理学)に興味がある人が多いため、メンタルが弱い傾向にあるのではないかと考えられます。
冒頭にも書きましたが、私自身も、自分がうつ病になったことで心理学分野に興味を持ち、そこでHSPを知るきっかけにもなりました。
HSPの人がうつ病になったときに休職できない3つの理由とは?
私がうつ病になった体験談や教訓は、以前の記事(上記リンク)でも既に書いておりますが、今振り返ると精神疾患に陥った一番の理由は、”自分一人で悩みを抱え込んでしまったから”だと考えています。
事実、うつ病の原因となったパワハラを受けていたときの私は、「うまくいかないのは自分のせいだ」「自分が置かれている状況はまだまだ甘い」といった自責の念にかられ、誰にも助けを求めることができませんでした。
精神疾患のサバイバル体験を集めた著書『私はこうしてサバイバルした』においても、解離性障害・摂食障害の当事者の体験談として、次のとおり書かれています。
私はずっと待っていたのです、誰かが助けに来てくれることを。でも、誰も来ませんでした。そりゃそうです。「助けて」と叫べれば、きっと誰かが助けてくれたことでしょう。でも、どれほど悲惨な状態にあっても、助けてほしいのかどうか、いまいちよくわからないというような態度をとり続けていたのですから。そのぐらい「私」がなく、また「助けて」という叫びを許されないことだと無意識のうちに抑圧していたのです。被虐待児にはよくみられる姿勢です。身の回りで起きる悲惨なことのすべては自分がよい子ではないからだと思い込んでいるので、暴力をふるわれても無視されても、何も言えません。
引用:松本俊彦・斎藤環・井原裕(2017)『私はこうしてサバイバルした』日本評論社
そして、自分一人で悩みを解決しようとすると、間違った手段で対処しようとしてしまうのです。
その代表例が、自傷行為・アルコール・麻薬というものです。
ちょっと前に、私はTwitterで、こんなツイートをしました。
自傷行為・アルコール・麻薬に逃げることは、「依存」と捉えられることが多い。
でも、当事者の話を聞くと、心のツラさを「対処」するためのツールとして使っている。
こういった対処に走る人は、一人で悩みを解決する意識が強い。
そう考えると、一人で悩まないことが何よりも大事だと実感します。
— ぽん乃助3.0@HSP働き方戦略ブロガー (@suke_of_pon) October 23, 2019
自傷行為・アルコール・麻薬は依存と捉えられがちですが、その人にとってみれば、心のツラさの対処方法であることが多いのです。
”自分一人悩みを抱え込んでしまう”と、間違った対処方法に走ってしまう可能性もあります。
HSPの人は、自分と他人との境界が薄く、他人の顔色や空気を過度に感じってしまう傾向にあるため、恐らく周囲に助けを求めるのが苦手で、自分一人で悩みを抱え込んでしまう人も多いのではないでしょうか。
このように、HSPの人の特性を踏まえてみても、HSPの人は精神疾患に罹りやすいと言えるのではないかと考えます。
また、私のうつ病の経験を踏まえると、「自分自身には価値がない」と感じてしまい、自分のことを一番攻撃していたのは自分自身であったと思っています。
そして、私の心にとどめを刺したのは、紛れもなく自分自身だったと思います。
著書『私はこうしてサバイバルした』においても、精神疾患者の多くのエピソードに共通していたのは、「自分の無価値感」というものでした。
例えば、摂食障害の経験者のエピソードでは次のとおり語られています。
摂食障害の症状は表面に出ている問題にすぎず、根底にある本質的な問題は「このままの自分では生きる価値がない」という自己否定感や自尊心のなさにあって、「頑張り屋のよい子」という摂食障害者の特徴は、実はこうした自己否定感の裏返しだと考えております。
引用:松本俊彦・斎藤環・井原裕(2017)『私はこうしてサバイバルした』日本評論社
この体験談を踏まえると、精神疾患は「自分の無価値感」による自己否定が顕著に表われたものなのではないかと考えられます。
HSPの人の特徴の一つとして、「自己否定が強い」ことが挙げられています。
HSPに共通すること(一部抜粋)
●自己否定が強い
自己肯定感が低いので、いつも「自分の責任かも」と考えてしまう傾向にあります。自分より他人を優先して考えてしまうために、本当の自分がわからなくなっているのです。
引用:長沼睦雄(2016)『敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本』永岡書店
これは私の感覚ですが、HSPの人は「自分の価値」を大事にする人が多いのではないかと思っており、だからこそ「自分の無価値感」を感じると、人一倍自己否定してしまうのではないかと思っています。
以前、HSP専門キャリアコンサルタントのみさきじゅりさんとお話ししたときも、HSPの人は”やりがい”を大事にする方が多いというコメントがありました。
【HSP対談vol.4】HSPの適職と働きやすい職場を見抜く方法(みさきじゅりさんとの対談)
今考えてみると、このことは、HSPの人は「自分の価値」に重きを置いている人が多いことの表れなのではないかとも思うのです。
やはり、自己否定の側面から考えてみても、HSPの人は精神疾患に罹りやすいのではないかと思うのです。
逆に考えてみれば、”自分の価値をどう見いだすのか?”ということが、精神疾患の予防や回復のキーポイントになってくるのではないかと思っています。
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精神疾患の予防や回復のヒントとは?
(1)自己受容感を育て、ありのままの自分の価値を認める
さて、先述のとおり、精神疾患の予防や回復のヒントは、”自分の価値をどう見いだすのか”という点にあると考えています。
つまりは、「どのようにすれば、自分の無価値感から脱却できるのか?」と言い換えることができると思います。
そのためには、自己受容感を育てて、ありのままの自分の価値を認められるようになることが大事なのではないかと考えています。
似た有名な言葉として自己肯定感がありますが(私もよく使っていたのですが)、最近、自己受容感と自己肯定感は使い分けるようにしています。
アドラー心理学を基調としたベストセラーの著書『嫌われる勇気』でも、この2つの言葉は使い分けられています。
ざっくり私の理解をお伝えすると、自己肯定感は「自分を褒める」ということであり、自己受容感は「自分を認める」ということであると考えています。
私は、うつ病を経験した身として思うのは、以前は気分の波が非常に大きかったと自覚しています。
例えば、悪いことがあると、必要以上に落ち込んでしまったりするのです。
そう考えると、気分の波を小さくすることを目指すことが大事なのではないかと、私は思うのです。
このことを踏まえると、自己肯定感を高めたところで、自分の悪いところが目立ってしまうと、急に自己否定感に陥ってしまうことも考えられるのではないかと思うのです。(自己肯定感を高めることで、余計に気分の波が大きくなる可能性があると思っています。)
そのため、自己受容感を育て、ありのままの自分(自分の長所も短所もそのまま)受け入れることが、何よりも大事だと私は考えます。
それでは、どのようにすれば、自己受容感が育つのでしょうか?
それは、「本音を言える仲間や居場所を見つけること」だと考えています。
以前にTwitterで、私はこんなツイートをしました。
「ありのままの自分」を認めることは、とても大事。
だけど、うつ病だった当時の私には、「ありのままの自分」を受け入れられるはずがなかった。
それは、誰からも「ありのままの自分」を認めてもらえなかったから。
つまり、自分で自分を認めるためには、他者から認められる体験も大事なんです。
— ぽん乃助3.0@HSP働き方戦略ブロガー (@suke_of_pon) October 22, 2019
そう、「ありのままの自分」を受け入れるというのは言葉でいうのは簡単なのですが、しんどいときこそ、そんな発想ができないのです。できるわけがないのです。
だからこそ、「本音を言える仲間や居場所を見つけること」が大事なのだと思います。
著書『私はこうしてサバイバルした』においても、依存症当事者の体験談として、次のとおり語られています。
私は、アルコール依存症、処方箋依存症、自傷行為、元引きこもりの当事者です。
(中略)
今、考えてみると、生きることの苦痛の圧倒的な理由は「孤独」だったと思います。
(中略)
初めて「居場所」が私に出現したのです。
(中略)
このこころのそこからジワジワわき上がってくる感情こそが共感であり、その共感による絆こそが「仲間」なのだと。
(中略)
自助グループに出席して、今まで人に絶対話すことができなかったことを私も話すようになりました。
(中略)
この本を読まれている多くの方々が、かつての私のように、自殺願望、自傷、依存、引きこもり、そして先が見えない孤独の日々を送られていると思います。でも、こんな元廃人の私でも生きてくることができたのです。ぜひサンプルの一つにしてください。
現在の私のサバイバル手段は間違いなく自助グループへの継続参加です。仲間と居場所が与えられたのです。
引用:松本俊彦・斎藤環・井原裕(2017)『私はこうしてサバイバルした』日本評論社
精神疾患の当事者の間では、自助グループが作られることがあります。
それは、どうしても本音で話しても、一般の人たちからは受け入れがたい内容だからです。
HSPは気質であり病気ではありませんが、最近では交流会がたくさん実施されているのも、「自分の無価値感」を感じていて「ありのままの自分を受け入れたい」と思っている人が多いからなのではないかと思います。
そういう意味でも、精神疾患の予防や回復の第一歩としては、「本音を言える仲間や居場所を見つけること」というのはとても大事なことなのではないかと考えています。
そして、自己受容感が高まることで、”自分一人で悩みを抱え込んでしまう”ということが、少なくなるのではないかと私は思っています。
この話と関連して、以前にHSPの交流会のメリットについて、学術論文を踏まえて考察したことがありますので、気になる方は以下のリンクからあわせてご覧ください。
HSPや発達障害の当事者交流会で得られる2つのメリットとは?
(2)承認欲求を捨て、自分の価値基準を変える
以前、HSPに関する勉強会に参加した際に、主催者である渡さん(渡さんのTwitterはこちら)が、HSPの段階について、次のとおりまとめていらっしゃいました。
先ほど述べた「ありのままの自分を受け入れる」というのは、上記の図で言うと、「認知→受容」の段階だと考えています。
そのため、十分に自己受容感が育ってきたら、「受容→活用」の段階に移行することが大事だと思っています。
というのも、十分に自己受容感が育っているのに、「HSP」という枠組みにとらわれすぎてしまうと、自己成長を阻むことにもつながってしまうからです。
以前に、「HSPを言い訳にすべきでない」と主張したことがあるのも、この考えからきています。
それでは、「受容→活用」の段階において、どのような心持ちでいれば良いのでしょうか?
それは、アドラー心理学の言葉を借りれば、「承認欲求を捨てる」ということです。
私がうつ病だったときに思うのは、他人の優しさがすべて嘘のように感じるということでした。
以前に、Twitterでこんなツイートをしました。
心が荒んでいたとき、他人の優しさが”嘘”にしか思えなかった。
ただ、人間という生き物がここまで進化して、文明を築きあげたのは、”嘘”をつけたからだそうだ。
他人の優しさなんて”嘘”でしかないのかもしれない…でも、”嘘”でも声を掛けてくれるだけで幸せ。
最近は、そう思うようになりました。
— ぽん乃助3.0@HSP働き方戦略ブロガー (@suke_of_pon) October 26, 2019
今思うと、私が素直な気持ちでいられなかったのは、「この人は自分の気持ちを分かってくれているはずがない」という気持ちが根っこにあったからだと思っています。
だけど、冷静になってみて考えれば当たり前ですが、他人のことを自分のことのように思ってくれている人なんて、ほとんどいるはずがないのです。
このときの私は、「誰かから認められたい」という気持ちがとても強かったのだと思います。
ただ、今はそういう気持ちは少しずつ、緩やかになってきています。
それは、自分の価値基準を、”他人から認められること”から”自分の価値は自分で決めること”に変えたからです。
もし、価値基準を”他人から認められること”のままでいた場合、もし今はうまくいっていても、職場などにおける周囲の人たちが変われば、自分の価値が一気に落ちる可能性があるのです。
この先長い人生で色んな事があることを考えると、「自分の無価値感」による自己否定から抜け出すためには、価値基準を変えるということがとても大事だと思うのです。
そして、これこそが精神疾患の予防や回復にもつながると、私は思うのです。
ちなみに、この考え方は、ベストセラーとなった著書『嫌われる勇気』の内容に通ずるものであり、以前に同書のエッセンスをまとめたことがありますので、気になる方は以下のリンクから、あわせてご覧ください。
私は、最終的なメンタル的なあるべき姿として考えているのは、自分を認めてくれる人が周りにいなくても、自分の価値を見いだせる状態だと思っています。
言い換えると、自分を客観視できる状態まで持って行くことが、メンタル美人の秘訣なのではないかと考えています。
精神疾患者の支援者の立場としても、最終到達目標は、「受援者自身が自分の専門家になってもらうこと」を目指すことが大事だと語られています。
精神疾患をもつ人を地域で支援する時の最終到達目標は、「自分の専門家になる」です。「自分の専門家になる」とは、良い時はどのような状態なのか、悪い時はどのような状態なのかを自分であらかじめ知っていて、言語化できることです。
引用:小瀬古伸幸(2019)『精神疾患をもつ人を、病院でない所で支援するときにまず読む本』医学書院
まさしく、「自分の専門家になる」ということは、自分を客観視できる状態なのではないかと思います。
また、著書『私はこうしてサバイバルした』においても、精神疾患者の体験談として、次のとおり語られています。
「自分のトリセツを作って、自分の人生を、”自分らしく”生きていくこと」が誰にだってできるのです。
引用:松本俊彦・斎藤環・井原裕(2017)『私はこうしてサバイバルした』日本評論社
自分のことは、自分が一番よく分かっている…これが本当の意味での自立であり、生活の中で幸せを感じるうえで、一番大事なことなのだと私は思っています。
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まとめ
●HSPの人が精神疾患に罹りやすい理由とは?
●精神疾患の予防や回復のヒントとは?
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか。
今回のテーマは少し重い内容を取り扱ったため、自分の経験も踏まえながら、丁寧に扱ってきました。
本ブログでは、精神疾患に対して深く触れることはこれまで少なかったのですが、いずれかは取り上げる必要があると思っていました。
それは、TwitterのHSP界隈を見ていると、精神疾患を公言している人が多く、HSPと精神疾患は切っても切り離せないと思っていたからです。
私はHSPそのものよりも、「生きづらさ」を感じる中でどのようにメンタルを健全に保つのかということを、本ブログでは伝えたいと思って、日々記事を更新しています。
それは、私自身がうつ病でツラい体験をしたからでもあります。
今回の記事が、「生きづらさ」の中にいる方にとって、助けになればと願うばかりでございます。
最後に改めて、今回の記事作成にあたって、参考とした著書『私はこうしてサバイバルした』をご紹介します。
精神疾患の実体験を集めた内容なので、メンタルで不安を抱えている人や支援者の立場の人にとっては、とても参考になる内容ではないかと思います。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
また次回も、よろしくお願いいたします!
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