人間関係に悩むHSPに一番必要なのは「嫌われる勇気」だ!
HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまる、繊細で敏感な気質の人を指します。(HSPの詳しい解説は、こちらからご覧ください。)
そして、私もHSPのひとりです。
さて、本ブログは、HSPが仕事や生活の中で感じる「生きづらさ」について、色んな著書をもとに考えてきました。
ただ、この一冊だけは、HSPの人の「生きづらさ」を語る上では外せないという著書があります。
それは、ビジネス書では異例のベストセラーとなった、アドラー心理学をテーマとした『嫌われる勇気』です。
HSPの人にオススメする著書を一冊だけに絞るとするならば、私は、確実にこの著書を挙げます。
HSPの人は、「生きづらさ」をきっかけに、自分をHSPと知るのではないかと思います。
そして、その「生きづらさ」の多くが、人間関係を指すのではないかと思います。
この「生きづらさ」は、どこから生まれ、どうすれば解放されるのか?
その答えが、分かりやすく詰まっている一冊です。
今回は、著書『嫌われる勇気』をもとに、「人間関係に悩むHSPの人が、どうすれば生きづらさから抜け出せるのか?」ということをお伝えします。
ぜひ、最後までご覧ください!
この記事の目次
HSPの人が人間関係に悩む理由とは?
HSPの人は人間関係に悩みやすいといわれています。
そのため、HSPにとっての適職のひとつとして、「1人で机や作業台に向かって自分のペースで行える仕事」が挙げられることが多いです。
ただ、私がHSPの適職を考えるときに、ずっと問題視しているのは、「1人で机や作業台に向かって自分のペースで行える仕事」というのは、ほとんど無いことです。
逆に言えば、この世の中の多くの仕事は、人間関係と切り離せないものが大半です。
この矛盾が、HSPの人に「生きづらさ」を感じさせているのではないかと思います。
さて、HSPの人に共通することとして、下記の点が挙げられます。
HSPに共通すること
・心の”境界線”がもろい
私たちは「自分は自分、人は人」と自他を区別するための目には見えない境界線を持っています。しかしHSPの場合はこの境界線が薄いことにより、他人の考えや気持ちが流れ込んで心の中がいっぱいになってしまうことがあります。
・疲れやすい
繊細で敏感なHSPは、人の気持ちに共感や同調しやすいので、いつも気を遣い、常に神経を高ぶらせた状態で生活しています。一日中休む暇もなく脳も自律神経もホルモンもフル稼働の状態であるため、どうしても非HSPに比べて疲れやすいのです。・刺激に敏感
HSPは、さまざまな刺激に対して敏感です。人により種類や程度は異なりますが、五感や六感、痛み、イメージ、感情、雰囲気にも敏感なのです。・人の影響を受けやすい
HSPは一緒にいる人の表情や声のトーン、身ぶりなどの小さなことから相手の気持ちを読みとってしまいます。また、人の言葉を真に受けて巻き込まれやすいのです。
・自己否定が強い
自己肯定感が低いので、いつも「自分の責任かも」と考えてしまう傾向にあります。自分より他人を優先して考えてしまうために、本当の自分がわからなくなっているのです。
・直観力がある
直感や予感が鋭いのも、HSPに共通する特徴です。「今、ここ」の目線よりは、未来や意味などを感じとる能力が高く、思考よりも感情に強く反応します。
引用:長沼睦雄(2016)『敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本』永岡書店
HSPの人は、繊細で敏感な気質を持ち、これらの特徴を持つからこそ、人間関係の距離をつかみづらく、人間関係で疲れやすいのではないかと思います。
そして、人間関係でうまくいかなかったときに、人一倍自己否定をしてしまい、不安や恐怖のループに陥るのではないかと思います。
さて、『嫌われる勇気』の中では、次のとおり語られています。
アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」とまで断言している
個人だけで完結する悩み、いわゆる内面の悩みなどというものは存在しません。どんな種類の悩みであれ、そこにはかならず他者の影が介在しています。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、アドラー心理学は、自分の悩みはすべて、人間関係につながっているという考え方に基づいています。
劣等感を感じたり、自分の心が傷ついたり、孤独で悩んだりするのは、他人と比べてしまうからこそ生まれるということです。
恐らく、悩みを持っているHSPの人の多くは、この考え方には納得できるのではないでしょうか?
さて、私はHSPの人に会ってきた中で、HSPの人でもうまくいっている人とそうでない人の違いがあると思っています。
それは、仕事や人間関係がうまくいっているHSPの人は、「個性(変えられない部分)を変えることは諦める」と同時に、「心(変えられる部分)を変えること」を諦めていない人が多いように思います。(この点については、以下の記事で考察しています。)
HSPで仕事や人間関係がうまくいく人といかない人の2つの違い
さて、この点については、『嫌われる勇気』の中でも触れられています。
「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めるのです。われわれは「なにが与えられているか」について、変えることはできません。しかし、「与えられたものをどう使うか」について、変えることはできません。しかし、「与えられたものをどう使うか」については、自分の力によって変えていくことができます。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
ただ、この点については、納得できる人も多いのではないでしょうか?
でも、その先が問題なのです。
実際に、「自分を変えたいけど、一歩を踏み出すのが怖くてなかなか変えることができない」と思われる方が多いでしょう。
アドラー心理学は、「勇気」という言葉を使って、この点を乗り越えようとする考え方なのです。
『嫌われる勇気』の中では、こう語られています。
いまのあなたが不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだからなのです。
(中略)
あなたが変われば、周囲も変わります。変わらざるをえなくなります。アドラー心理学とは、他者を変えるための心理学ではなく、自分が変わるための心理学です。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、自分の不幸につながる「生きづらさ」は、自分で作り出しているということ。
そして、そんな自分から脱却するための心理学が、アドラー心理学であるということ。
『嫌われる勇気』では、どうすれば自分が変われるのかということを、丁寧に描かれているわけです。
そして、HSPの人が「生きづらさ」から脱却するにあたっても、直結する考え方にもなっています。
だからこそ、『嫌われる勇気』は、HSPの人に一番オススメしたい本なのです。
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HSPの人はどうなれば、人間関係の悩みから解放されるのか?
HSPの人は、どうすれば人間関係の悩みから解放されるのでしょうか?
今の会社を辞めてフリーランスになれば、すぐに解決する話なのでしょうか?
私は、そうは思いません。
仕事や生活をするにあたって、他者とのつながりは必須です。
どんなところでも、人間関係は求められます。
だからこそ、人間関係そのものに対する考え方を変えなければ、人間関係の悩みから脱却できないと私は思います。
さて、『嫌われる勇気』の中で、アドラー心理学が目指す目標について、次のとおり語られています。
【行動面の目標】
①自立すること
②社会と調和して暮らせること【心理面の目標】
①わたしには能力がある、という意識
②人々はわたしの仲間である、という意識引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、アドラー心理学においては、この目標が満たされたとき、人間関係の悩みから解放され、幸福を感じると語られているのです。
さて、私はそもそもHSPの人に限らず、人間関係に悩みを持つ人が多いのではないかと思っています。
そのため、この著書が爆発的に売れたのではないかと思っています。
それは、日本人が不安傾向にあるからだと考えています。
この点については、以前に考察したことがあり、日本のHSPは5人に1人よりも多いのではないかという私の仮説にもつながっています。
気になる方は、ぜひ以下の記事からご覧ください。
繊細で敏感な気質(HSP)は遺伝する?本当に5人に1人なの?
さて、『嫌われる勇気』では、ここに到達するための方法について、具体的に描かれています。
それでは、この具体的な方法について、お伝えしていきたいと思います。
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人間関係の悩みから脱却するための3つのこと
(1)自分の考え方を原因論から目的論に変えて「自分を変える」勇気を持つ
「生きづらさ」を感じるHSPの人は、自分を変えることが必要だということは分かりつつも、なかなか自分を変えることができないと感じる人が多いのでしょうか。
アドラー心理学では、その理由は、原因論で物事を考えていることにあると語られています。
『嫌われる勇気』では、引きこもりの友人を事例に、次のとおり書かれています。
アドラー心理学では、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考えます。
ご友人は「不安だから、外に出られない」のではありません。順番は逆で「外に出たくないから、不安という感情を作り出している」と考えるのです。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、これには驚きを隠せない人も多いかも知れませんが、アドラー心理学の考え方では、この場合で言うと「外に出たくない」という目的が先にあって、「不安」という感情が生まれているのです。
逆に言えば、人間は感情に支配されるものではなく、感情をコントロールできることを指しています。
そのためには、原因論で物事を考えるのではなく、目的論で物事を考えることが重要であるということです。
これは、感情に限る話ではなく、経験にも当てはまります。
例えば、最近は「毒親」という言葉が生まれました。
これは、親が、自分の生き方を不幸にした毒のような存在だという意味を指します。
つまりは、今の自分の生きづらさの原因として、親の存在を持ち出す考え方です。(『嫌われる勇気』の著書の中でも、「毒親」に通ずるお話が出てきます。)
ただ、アドラー心理学は、これ考え方自体も否定することにつながります。
原因論で考えれば、「融通の利かない親のもとで育ってきたからこそ、私は自分で考えて行動できなくなってしまった」という風に言えると思います。
ただ、目的論で考えれば、「私は自分で考えたくないので、親を融通の利かなかった存在と見なしている」という風に言い換えられてしまうのです。
そして、これは感情・経験に限らず、生まれつきの性格や気質にも通ずる話としています。
『嫌われる勇気』では、次のとおり書かれています。
アドラー心理学では、性格や気質のことを「ライフスタイル」という言葉で説明します。
(中略)
きっとあなたは、気質や性格は自分の意思とは無関係に備わるものと考えているはずです。しかしアドラー心理学では、ライフスタイルスタイルは自ら選び取るものだと考えます。
(中略)
あなたが変われないでいるのは、自らに対して「変わらない」という決心を下しているからなのです。
(中略)
ライフスタイル(自分の気質)を変えようとするとき、われわれは大きな”勇気”を試されます。変わることで生まれる「不安」と、変わらないことでつきまとう「不満」。きっとあなたは後者を選択されたのでしょう。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
気質と言うことはつまり、HSPにも通ずる話です。
ここまでご覧になっている方は「あっ」と思ったかも知れませんが、「自分が変わりたくない」という理由に、HSPという概念が使われている可能性にも通ずるわけです。
私個人の考え方としては、このアドラー心理学の考え方は、とっても厳しいことを言っていると思います。
だけど、真理を突いていると思う考え方だとも思っています。
もちろん、HSPという言葉を知ることで、生きづらかった自分の原因が分かり、心の安堵につながる効果があるというのは、とても良いことだと思っています。
私自身、HSPという言葉に救われた部分があります。
だけど、HSPという枠に当てはまり続けると、自己成長(自立)を阻害することは否めないと考えています。
以前に、私は「自分がHSPであることを言い訳にすべきでない」という記事を執筆しました。
この主張の意図は、まさにこのアドラーの考え方にも通ずるというわけです。
さて、話が長くなってしまいました。
まとめると、アドラー心理学では、自分がいま「生きづらい」のであれば、自分が変わらなければいけないということ。
そして、考え方を「原因論」から「目的論」に変え、「感情」「経験」「気質・性格」といった足かせを外して「自分が変わる勇気」を持つことが、自分を変えるためにはとても大切だということです。
(2)自分の課題と他者の課題を切り分けて「嫌われる勇気」を持つ
HSPの人は、敏感で繊細な気質がゆえに、生きづらいと言われます。
ただ、この「生きづらさ」とは、何なのでしょうか。
私は、「生きづらさ=不自由さ」なのではないかと考えています。
つまり、生活や仕事の中で、自分がありのままでいられない「不自由さ」を感じ、それを「生きづらさ」と考えているのではないかと思っています。
アドラー心理学では、不自由を感じる理由には、「承認欲求」を自分の価値に置いているからだと考えています。
『嫌われる勇気』には、次のとおり書かれています。
われわれは「他者の期待を満たすために生きているのではない」のです。
(中略)
他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的に他者の人生を生きることになります。
(中略)
自由とは、他者から嫌われることである
(中略)
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれないのです。
(中略)
幸せになる勇気には、「嫌われる勇気」も含まれます。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、「生きづらさ」から抜けだして自由(幸せ)を感じるためには、承認欲求を捨てて「嫌われる勇気」を持つことが大事だというわけです。
とはいえ、この考え方をいきなり受け入れるためには、抵抗感があるのではないかと思います。
『嫌われる勇気』では、承認欲求を捨てるための具体的な方法として、「自分の課題と他者の課題を切り分けること(課題の分離)」を挙げています。
たとえば目の前に「勉強する」という課題があったとき、アドラー心理学では「これは誰の課題なのか?」という観点から考えを進めていきます。
(中略)
勉強することは子どもの課題です。そこに対して親が「勉強しなさい」と命じるのは、他者の課題に対して、いわば土足で踏み込むような行為です。これでは衝突を避けることはできないでしょう。われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです。
(中略)
(大事なのは、)子どもがなにをしているのか知った上で、見守ること。勉強についていえば、それが本人の課題であることを伝え、もしも本人が勉強したいと思ったときにはいつでも援助をする用意があることを伝えておく。けれども、子どもの課題に土足で踏み込むことはしない。頼まれもしないのに、あれこれ口出ししてはいけないのです。
引用(一部加筆):岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、何でもかんでも責任を持とうとするのではなく、自分の課題を明確にし、その課題だけに責任を持つことが人間関係においては大事だということです。
また、他者の課題に踏み込むことは、人間関係も悪化させるし、相手の成長も阻害すると、著書内では語られています。
HSPの人は、他人との心の境界線が薄いといわれ、自分と他人の間に線引きすることが大事と言われますが、その線引きの方法の一つが、まさにこの「課題の分離」なのではないかと思います。
これは、親と子どもの関係のみならず、会社における上司と部下の関係にも当てはまります。
例えば、理不尽に怒鳴る上司に対して、「怒られないようにしよう」とか「機嫌をとらなければいけない」と考えるのは、課題の分離ができておらず、自己承認欲求も捨てられていないということです。
課題の分離が適切にできていれば、機嫌をコントロールできないのは、上司の課題だということが分かります。
そのため、この課題に対して、部下は責任を感じる必要もないですし、踏み込むと余計に苦しくなると言うことが分かります。
ただ、実際に、HSPである私が会社にいる中で、この「嫌われる勇気」を徹底的に貫くことは難しいと思っています。
それは、本当に嫌われてしまったら、仕事がしづらくなってしまうからです。
そんな私がオススメしたいのは、「苦手な人に対して好かれようと思わないこと」です。
「嫌われたくない」という気持ちの裏腹には、「好かれたい」という承認欲求が隠されているのだと思います。
だからこそ、「嫌われる勇気」まで持たないまでも、「好かれようと思わない勇気」を持つことは、人間関係の構築にあたって、とても大事なのではないかと思います。
私は、「好かれようと思わない勇気」を貫いた結果、交友関係は減りましたが、本当に大事な人間関係(本音で物事が言い合える人間関係)だけを作ることができたと感じています。
これによって、私にとっては、本当に「生きづらさ」の改善につながりました。
私の経験を踏まえても、承認欲求を捨てるということは、本当に大切だと考えています。
(3)「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」を持って「いま、ここ」に生きる
さて、先ほどは、承認欲求を捨てることの大事さを述べました。
ただ、アドラー心理学では人間関係を築くにあたって、それは入り口だと述べています。
それでは、ゴールはどこなのか?
それは、「共同体感覚」だと述べられています。
「共同体感覚」とは、他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを指しています。
実は、人間が幸せに生きるにあたって、「自分の居場所がある」と感じることはとても大切だと言われています。
実体験をもとにまとめた『私はこうしてサバイバルした』という著書では、アルコール依存症・処方薬依存症・自傷行為・引きこもりといった問題を抱えていた方が、メンタルの問題から脱却した過程について、次のとおり語られています。
私は、アルコール依存症、処方箋依存症、自傷行為、元引きこもりの当事者です。
(中略)
今、考えてみると、生きることの苦痛の圧倒的な理由は「孤独」だったと思います。
(中略)
初めて「居場所」が私に出現したのです。
(中略)
このこころのそこからジワジワわき上がってくる感情こそが共感であり、その共感による絆こそが「仲間」なのだと。
(中略)
自助グループに出席して、今まで人に絶対話すことができなかったことを私も話すようになりました。
(中略)
この本を読まれている多くの方々が、かつての私のように、自殺願望、自傷、依存、引きこもり、そして先が見えない孤独の日々を送られていると思います。でも、こんな元廃人の私でも生きてくることができたのです。ぜひサンプルの一つにしてください。
現在の私のサバイバル手段は間違いなく自助グループへの継続参加です。仲間と居場所が与えられたのです。
引用:松本俊彦・斎藤環・井原裕(2017)『私はこうしてサバイバルした』日本評論社
このように、実際にメンタルの問題から抜け出せた理由に、「自分の居場所」を指す事例もあるのです。
そして、アドラー心理学では、「共同体感覚(自分に居場所があるという感覚)」を持つためには、横の関係が大事だと考えられています。
無論、体罰はもってのほかですし、叱ることも認めません。ほめてはいけないし、叱ってもいけない。それがアドラー心理学の立場です。
(中略)
ほめるという行為には「能力のある人が、能力のない人に下す評価」という側面が含まれています。
(中略)
アドラー心理学ではあらゆる「縦の関係」を否定し、すべての対人関係を「横の関係」とすることを提唱しています。
(中略)
いちばん大切なのは、他者を「評価」しない、ということです。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
これは、会社の中の立場の上下にかかわらず、「横の関係」の意識を持つことが大事だということです。
つまりは、褒めたり・叱ったりするような「縦の関係」を排除し、本音で話し・相手の意見をありのまま受け入れられる「横の関係」を増やすことが大事だと、アドラー心理学では考えられているわけです。
とはいえ、人間関係をすべて、いきなり「横の関係」だと考えるのは難しいですよね?
そこで、『嫌われる勇気』では、横の関係と感じられる人を少しずつ作っていくことが大事だと述べられています。
そして、そのために重要なことは、「自己受容」「他者受容」「他者貢献」の3つだと言われています。
著書を踏まえて、その3つの私なりの解釈を、次のとおりまとめました。
・自己受容:自分のできる部分もできない部分も、等身大のまますべて受け入れること ・他者信頼:見返りを求めず、裏切られることを怖れず、相手を受け入れること ・他者貢献:「自分の課題」に対しては言い訳をせずに立ち向かい、「わたしは誰かの役に立っている」という感覚を持つこと |
この3つを持つことで、「横の関係」が増えていき、ひいては「自分の居場所がある」と感じられるようになるというわけです。
そして、『嫌われる勇気』では、最後に次のとおり述べられています。
他者から「よい」と評価されるのではなく、自らの主観によって「わたしは他者に貢献できている」と思えること。そこではじめて、われわれは自らの価値を実感することができるのです。いままで議論してきた「共同体感覚」や「勇気づけ」の話も、すべてはここにつながります。
(中略)
人生とは、(線ではなく、)連続する刹那なのです。
(中略)
われわれは「いま、ここ」にしか生きることができない。
(中略)
「いま、ここ」が充実していれば、それでいいのです。
(中略)
目的地は存在しないのです。
(中略)
「他者に貢献するのだ」という導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、なにをしてもいい。嫌われる人には嫌われ、自由に生きてかまわない。
引用:岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
そう、幸せを感じるためには、人生を線で捉えるのではなく、点として捉えること。
そして、目的地が存在しなくても、「他者貢献」の気持ちさえ持ち続けていれば、見失うことはないということです。
私が、会社でパワハラに遭っていた頃、うつ病に陥った一番の原因は、人生に対して絶望感を感じたからです。
だけど、それは人生を線で捉えており、未来を感じられなくなったから、ツラかったのです。
おそらく、HSPの人の中にも、自分に居場所があるという感覚を持てずに悩んでいる人も多いと思います。
ここから脱却するためには、「自己受容」「他者受容」「他者貢献」の3つの意識を持って横の関係を増やしていき、「いま、ここ」を生きるのを意識することが大事なのではないかと、私は思います。
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まとめ
●HSPの人が人間関係に悩む理由とは?
●HSPの人はどうなれば、人間関係の悩みから解放されるのか?
●人間関係の悩みから脱却するための3つのこと
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか?
私は、『嫌われる勇気』には、HSPの人の「生きづらさ」と、ここから脱却するためのヒントが詰まっていると思っています。
確かに、内容は自分を変えることに踏み込んでおり、とても厳しい内容になっていると思います。(著書内でも、実践することの難しさに触れられています。)
だけど、人間関係の悩みを乗り越えるために、ここまで具体的に書かれている著書はあまりないのではないかと思います。
これを読んで、明日から自分を変えるというのは、難しいと思います。
だけど、今後を生きていくにあたって、とても大事な考え方が書かれていると思いますので、一つでも二つでも、実践できそうなものを試していくことが大切なのではないかと思っています。
だから、改めてこの一冊は、HSPの方へのオススメの著書として、ご紹介したいと思います。
心理学系の著書やブログを読んでいると、直接アドラー心理学のことは触れられていないものの、この考え方がベースになって語られている本が多いと思います。
そして、この本の影響がとても強かったのは、ある意味、日本人に受け入れられやすい内容だからこそだと思っています。
著書を読む時間がないHSPの方にも、エッセンスだけでもお伝えしたいと思い、記事にまとめました。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
もし、悩んでいる方にとって、少しでもお役に立てたのであれば、大変幸いです。
それでは、また次回も、よろしくお願いいたします!
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