HSPの人がトラウマを抱えやすい理由と不安の克服法とは?
HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまる、繊細で敏感な性格の人を指します。(詳しくは、こちらから解説をご覧ください。)
さて、HSPの人は、繊細で敏感な性格がゆえに生きづらいと言われます。
そして、自己肯定感も低いため、自己否定が強い人も多くいるとも言われています。
そのため、本によっては、HSPの人はうつ病や依存症になりやすいと言及しているものもあります。
私は、その原因のひとつが「HSPの人は、嫌なことを忘れることが苦手」だからなのではないかと考えています。
逆に言えば、「HSPの人は、トラウマを抱えやすい」のではないかとも思っています。
皆さんの中でも、なかなか嫌なことを忘れることが苦手な人もいるのではないでしょうか?
今回は、岡野憲一郎氏の著書『精神科医が教える 忘れる技術』を参考に、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由について考察し、更には嫌なことを忘れる方法もお伝えしたいと思います。
※私は、医療関係者ではございません。今回の記事は、あくまで一個人の考察として、理解いただけますと大変幸いです。
HSPの人がトラウマを抱えやすい理由とは?
(1)すぐに忘れられる記憶と忘れられない記憶について
人は記憶によって、生きています。
例えば、ある風景を見たときに、以前に見たことがあれば、そのときの記憶がふと浮かぶことがあると思います。
このように人の生活は記憶が連続しているからこそ、仕事も家事などの日常生活が成り立つのは、皆さんも実感ができることだと思います。
普段は生活の役に立つ記憶ですが、その記憶がたまに自分の足を引っ張ることがあります。
それは、嫌な記憶です。嫌な記憶は、なかなか忘れることが難しく、フラッシュバックのように急に記憶が蘇り、不安感や恐怖感を煽り、生活に支障をきたすことがあります。
岡野憲一郎氏の著書『精神科医が教える 忘れる技術』では、記憶について、次のとおり定義されています。
・善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶) いつもは格納されていて、必要に応じて思い出して用いることができる性質を持つ記憶 ・外傷記憶(忘れられない記憶) いつ襲ってくるかわからず、突然フラッシュバックという形をとってやって来る性質を持つ記憶 引用(一部改変):岡野憲一郎(2019)『精神科医が教える 忘れる技術』創元社 |
ここでいう善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)は生活の役に立つ記憶であり、外傷記憶(忘れられない記憶)は自分の足の記憶として、定義できるかと思います。
今回詳しく述べていく外傷記憶(忘れられない記憶)は、皆さまも一度はお聞きしたことがあるかもしれない「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という心の病気にもつながりうる厄介なものになります。
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれています。
突然、怖い体験を思い出す、不安や緊張が続く、めまいや頭痛がある、眠れないといった症状が出てきます。とてもつらい体験によって、誰でも眠れなくなったり食欲がなくなったりするものですが、それが何カ月も続くときは、PTSDの可能性があります。引用:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト|PTSD」(アクセス日:2019年3月3日)
さて、善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)と外傷記憶(忘れられない記憶)には、どのような仕組みの違いがあるのか?
次は、その点について述べ、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由を考察していきます。
(2)HSPの人がトラウマを抱えやすい理由とは?(脳の働きの観点から)
さて、記憶には、善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)と外傷記憶(忘れられない記憶)の2種類あることを述べてきました。
それでは、その仕組みの違いを脳の働きの観点から述べていき、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由を考察したいと思います。
さて、人の経験には2種類のものがあり、著書『精神科医が教える 忘れる技術』では、次のとおり定義されています。
【人の経験の種類(事例:公園に散歩に行った場合)】 「頭の経験」 「体の経験」 引用(一部改変):岡野憲一郎(2019)『精神科医が教える 忘れる技術』創元社 |
確かに、経験を2つに分けたら、このように言えそうですね。
端的に言えば、「頭の経験≓事実」であり、「体の経験≓情緒」と考えられそうですね。
で、ここからが核心に迫るのですが、この「頭の経験」と「体の経験」がしっかりと結びついたものであれば「善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」となり、「頭の経験」と「体の経験」がしっかりと結びつかないと「外傷記憶(忘れられない記憶)」になってしまうのです。
少し分かりづらいので、イメージ図で示したいと思います。
著書『精神科医が教える 忘れる技術』では、父親の死を乗り越えられない事例が挙げられています。
この事例では、「頭の経験(父親の寝ている情景)」と「体の経験(悲しさ、さびしさ)」が結びついていなかったため、「外傷記憶(忘れられない記憶)」となってしまったという解説がなされています。
逆に言えば、この事例でも「頭の経験(父親の寝ている情景 など)」と「体の経験(悲しさ、さびしさ など)」がしっかりと結びつけば、「善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」として、自分の中できちんと消化できる記憶となるわけです。
それでは、何故、「頭の経験(≓事実)」と「体の経験(≓情緒)」が結びつかないときがあるのでしょうか。
それは脳内の働きに、理由があるようです。
【脳内の働き】 ・頭の経験(≓事実):脳内の海馬が司る ・体の経験(≓情緒):脳内の扁桃核が司る ⇒人が感動すると扁桃核が興奮し、この興奮は海馬に伝わる。ただし、扁桃核の興奮が異常なまでに強いときは、逆に海馬の働きを抑制してしまう。 参考:岡野憲一郎(2019)『精神科医が教える 忘れる技術』創元社 |
そう、つまりは、あまりに強烈な悲しみやさみしさといった「体の経験(≓情緒)」を経験してしまうと、その体験がいつ、どこで起きたかといった「頭の経験(≓事実)」が非常に曖昧になる仕組みになっているのです。
さて、ここからは、何故HSPの人がトラウマを抱えやすいのかという点について、考察していきたいと思います。(ここからは、一個人の考察として、理解いただけますと幸いです。)
トラウマを抱えやすいと言うことは、逆に言えば、嫌な記憶を忘れることが苦手だと言い換えることができると考えています。
そして、HSPである私自身も、嫌な記憶を忘れることが苦手だと自負しています。
今回、この問題点について述べるにあたって、脳の働きについて述べましたが、最初に私がこれを見聞きしたときにこう思いました。
HSPの人は、「体の経験(≓情緒)」が一般の人よりも強く感じ取るために、嫌なことが「外傷記憶(忘れられない記憶)」となりやすいのではないかと考えました。
そのため、私はHSPの生きづらさを克服するための一条件として、「嫌なことを忘れることを上手になる」ということが挙げられるのではないかと思いました。
それでは、次に、心の働きの観点から、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由を考察していきたいと思います。
(3)HSPの人がトラウマを抱えやすい理由とは?(心の働きの観点から)
さて、次に善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)と外傷記憶(忘れられない記憶)の仕組みの違いを心の働きの観点から述べ、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由を考察したいと思います。
さて、著書『精神科医が教える 忘れる技術』では、心の働きとして次のとおり書かれています。
誰かに精神的、肉体的苦痛を味あわされたとき、それを不当だと感じて強い怒りをおぼえるものです。その怒りは相手に対して報復行為、すなわち自分に加えられたのと同じ苦痛を返さないかぎりは、いつまでも心のなかに残りつづける傾向があります。
逆に、私たちが誰かを害してしまったときにも、なんらかの形で罪の意識や負い目を感じるのがふつうです。
(中略)
ただし現実社会では、危害を加えられた相手に対し怒りを直接あらわに表現できないことが多く、こちらが傷つけた側であっても、すぐ謝罪できるとはかぎりません。
引用:岡野憲一郎(2019)『精神科医が教える 忘れる技術』創元社
これを見たときに、私はハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」を思い出しました。
日本式に言えば、「喧嘩両成敗」と見ることもできるでしょうか。
つまり、やられたらやり返すことができれば、「善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」として消化できるようなのですが、今の社会では心理的にも、環境的にも簡単にやり返すことは難しいということです。
だからこそ、被害経験や加害経験が「外傷記憶(忘れられない記憶)」として残りやすいとも、言えるかと思います。
でも、ここが更に複雑なのですが、じゃあ同じくらいやり返せば良いのかというと、そうではありません。
このことについては、著書に「心のバランスシート」という表現で、書かれています。
イメージは次の表を見てください。
バランスシートは会計で使われるツールであり、簿記などを習得されている人はすぐに理解できるかもしれません。
理解が難しい方は、次のように理解してください。
表の左側は、自分がAさんに危害を与えたり、Aさんから自分に恩をもらったりといった「借り」であるということ。
表の右側は、Aさんが自分に危害を与えたり、自分がAさんに恩を与えたりといった「貸し」であるということ。
そして、「借り」と「貸し」が一致すれば、心の平穏が保たれ、嫌な記憶も「善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」として消化できるということになります。
上記の表で言えば、「X+X’(借りの合計)=Y+Y’(貸しの合計)」が一致すれば良いと言うことになります。
でも、ここで問題が出てきます。
会計(簿記)でいうバランスシートでは、「円」という量でハッキリと同じかそうでないかは、視覚的にハッキリ分かります。
でも、「心のバランスシート」では、上記表の例で言えば、XやX’・YやY’の大きさは、Aさんと自分では価値基準が異なるため、一致しない場合があるのです。
つまり、会計では客観的な指標として分かりやすいのですが、心ではどうしても当事者同士の主観的な価値基準で比較しなければいけないのです。
よく、「いじめ」では被害者側は心に強く記憶に残り、加害者側は心に記憶が残らないと言われます。
「いじめ」以外の例においても、被害者は心に強く記憶に残る傾向があり、加害者側は心に記憶が残らない傾向にあるそうです。
だからこそ、「心のバランスシート」の「借り」と「貸し」を一致させるのも、なかなか難しい場合があると言うことです。
そして、ここからは、何故HSPの人がトラウマを抱えやすいのか(嫌な記憶を忘れることが苦手なのか)という点について、考察していきたいと思います。(ここからは、一個人の考察として、理解いただけますと幸いです。)
それは、例えば被害を受けた場合に、HSPの人は繊細な性格がゆえに、一般の人以上に心のダメージの大きさを感じてしまうからではないかと思います。
つまりは、先ほど紹介した、XやX’・YやY’が、一般の人よりも過大に感じてしまうということです。
だからこそ、人間関係のトラブルが起こったときには、うまく心のバランスシートの均衡をとることができずに、「外傷記憶(忘れられない記憶)」として残りやすいのではないかと考えました。
それでは、次に、HSPの人が嫌なことを忘れて不安を克服する方法を説明したいと思います。
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HSPの人が嫌なことを忘れて不安を克服する方法とは?
(1)忘れられない記憶の種類と克服する方法のマッピング
さて、ここまで、忘れられない記憶の構造を脳と心の働きから、述べてきました。
そして、HSPの人がトラウマを抱えやすい理由も考察してきました。
実は、忘れられない記憶には多くの種類があります。
そして、個人差もあるものの、その種類別に克服する方法もあります。
そこで、著書『精神科医が教える 忘れる技術』をもとに、忘れられない記憶の種類と克服する方法をマッピングしてみました。
【忘れられない記憶の種類】 ・記憶①:テロや戦争をはじめ、地震、火事、津波などの強い被害体験により突然よみがえってくる記憶
【忘れられない記憶からの克服方法】 ・方法①:忘れたい記憶を遠ざける
【忘れられない記憶と克服方法のマッピング】 ※○をつけた部分が、その忘れられない記憶にとって、主に有効な克服方法を指す |
(2)忘れられない記憶を克服した私の経験
私自身、クラッシャー上司からのパワハラを社会人1年目の時に受けていて、うつ病になったことがあります。
その経験から、忘れられない記憶の種類と克服する方法について、更に深掘りして考えていきたいと思います。
上記の表で言い換えると、忘れられない記憶として、「記憶①」「記憶②」「記憶④」を抱えていたため、辛い思いをしていました。
あくまで、私の経験ですが、同様の悩みを仕事で抱えている方は、まずは「方法①:忘れたい記憶を遠ざける」が何よりも大事だと考えています。(私のパワハラ経験とうつ病経験を踏まえた教訓は、以前にブログ記事にまとめておりますので、気になる方はぜひ以下のリンクからご覧ください。)
クラッシャー上司のパワハラでうつ病になった場合のたった一つの対処法は?
HSPの人がうつ病になったときに休職できない3つの理由とは?
よく、「ストレッサー」から逃げろとも言われますね。
私は幸い、部署異動で、クラッシャー上司のもとを離れることができ、冷静に物事を考える時間と心の余裕が生まれました。
たくさんの克服方法をまとめてきましたが、まずは冷静に物事を考える時間と心の余裕は何よりも大事だと考えています。
だからこそ、忘れられない記憶に悩んでいる人は、まずはじめに「方法①:忘れたい記憶を遠ざける」ことが、私は大事だと考えています。
そして、個人的に「方法①:忘れたい記憶を遠ざける」とあわせて大事だと思うことは、医者やカウンセラーにあたることだと思います。
私自身は、「方法⑧:薬物療法を試みる」ということが、強い薬がうまく心と体に合わずうまくいきませんでしたが、これによって救われている人が多いのも事実です。
ただ、私も「不眠症」に悩まされていたため、睡眠薬だけは処方いただき続け、かなり気持ちが楽になりました。
そして、何よりも私が救われたのは、「方法④:人に話す(カウンセリングを受ける)」でした。
上記表を見れば分かるとおり、著書『精神科医が教える 忘れる技術』においても、万能の克服方法として定義されています。
それは何故かというと、忘れられない記憶を克服するにあたって、どうしても万人に共通する「忘れる方法」がなく、カウンセリングを受けることで、色んな観点から自分にとって「忘れる方法」を導き出してくれるからです。
本ブログでも、私がカウンセラーから教えてもらったことを紹介したことが多々あります。
そんな私から、医者やカウンセラーを見つけるにあたって、1つアドバイスがあります。
それは、「自分と合わない医者やカウンセラーであれば、すぐに変えろ!」ということです。
その医者やカウンセラーがいくら優秀な方であっても、人と人との相性は絶対に発生してきます。
せっかく、忘れられない記憶を克服しようと、医者やカウンセラーにあたってるのに、相性が合わずに自分がガマンしていたら、何の意味がありません。
だからこそ、忘れられない記憶に悩まされている人は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、上記で紹介した「方法⑤:相手について知る(理解し、許す)」については、本ブログでマインドフルネスと掛け合わせた方法を紹介したことがあります。(詳細は、以下リンクからご参照ください!)
HSPの人が手軽に自己肯定感を高められるマインドフルネス瞑想とは?
また、「方法⑦:与える人生を歩む」についても、本ブログで趣味と掛け合わせた方法を紹介したことがあります。(詳細は、以下リンクからご参照ください!)
ぜひ、ご覧いただきまして、少しでも皆さまの生活にプラスになれば大変幸いです。
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まとめ
・人の記憶には2種類あり、「①善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」と「②外傷記憶(忘れられない記憶)」がある。「①善玉の記憶(すぐに忘れられる記憶)」は日々の生活を助けてくれるものであり、「②外傷記憶(忘れられない記憶)」は日常生活の足を引っ張るものである! ・HSPの人がトラウマを抱えやすい(≓嫌なことを忘れるのが苦手)な理由は次のとおり!
・忘れられない記憶を克服するためには、「忘れたい記憶を遠ざける」ことや「人に話す(カウンセリングを受ける)」ことが有効である!(※忘れられない記憶の種類と対応した克服方法のマッピングは、こちらからご覧ください!) |
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おわりに
さて、今回は「トラウマ」や「忘れられない記憶」といった、重いテーマに踏み込みました。
このテーマに触れたかった理由としては、HSPである私自身が、このテーマに実際に悩まされてきたからです。
恐らく、本ブログをご覧になっている方で、同じ悩みを抱えている人もいらっしゃると思ったので、情報をまとめようと思いました。
最初に、「医療関係者ではないため…」といった前置きは置いたものの、重いテーマを扱うことには変わりがないため、今回は専門書を一冊携えて情報をまとめてみました。
本記事では、同著書のポイントを押さえて、さわりだけを使用させていただきました。
本の内容としては、少々難しい部分もありましたが、「具体的にどうすれば良いのか?」という点が踏み込まれて記載されているため、「トラウマ」や「忘れられない記憶」で悩んでいる方は、実際にこの本を読んでみることもオススメします!
恐らく、本記事を副読書的な形で使っていただければ、同著書の理解もしやすくなるのではないかと思っています。
ちなみに、同著書は以前に刊行された『忘れる技術―思い出したくない過去を乗り越える11の方法』を改題・新装したものということで、既に読まれたことがある人もいらっしゃるかもしれませんので、念のため、お伝えしておきます。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
もし、悩んでいる方にとって、少しでもお役に立てたのであれば、大変幸いです。
それでは、また次回も、よろしくお願いいたします!
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