HSPの人がパワハラされた場合の対処法は?入社NGな会社の特徴も
HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまると言われる、繊細で敏感な気質の人を指します。(HSPの詳しい解説は、こちらからご覧ください。)
そして、HSPの人は生まれつきの気質がゆえに、仕事で”生きづらさ”を感じやすいといわれています。
Googleの検索結果などを見ると、「HSP 適職」「HSP 仕事」などのキーワード結果が上位に多く、今の仕事に悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
特に、HSPの人は繊細であるがゆえに、仕事の人間関係に悩まされている人も多いと思います。
そして、人間関係でいえば、HSPの人が一番身を守らなければいけないのは、パワハラ(パワーハラスメント)だと思っています。
おそらく、過度に空気を読んでしまって我慢しやすいと言われるHSPの人は、「私はパワハラを受けているかもしれない…」と思っても、泣き寝入りしてしまうケースも多いのではないでしょうか。
そんなことを問題提起するのは、私自身、以前に上司からのパワハラを我慢した結果、うつ病になり苦しい経験をしたことがあるからです。
ご存じでない方も多いかもしれませんが、2020年6月から「改正労働施策総合推進法」(通称:「パワハラ防止法」)が順次施行され、いま「パワハラ」はホットな話題でもあります。
そこで今回は、HSPの人がパワハラされた場合の対処法とパワハラが起きやすい会社の特徴をお伝えいたします。
なお、今回の記事執筆にあたっては、著書『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』を参考にします。
ぜひ、最後までご覧ください!
(*)動画版も作成していますので、記事を読むのが大変な方は、以下YouTubeよりご覧いただければと思います!
この記事の目次
なぜ、パワハラが起きてしまうのか?
(1)パワハラの発生状況
パワハラの対策を考える前に、「パワハラって、どれくらい社会に溢れているのか?」という現状から整理したいと思います。
平成28年度の厚生労働省の調査「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」をもとに、パワハラの発生状況を以下のとおり整理してみました。
【パワハラの発生状況】 ①過去3年間でパワハラを受けたことがあると回答した従業員:32.5% ②過去3年間に従業員から1件以上パワハラに該当する相談があったと回答した企業:36.3% ③パワハラの予防・解決に向けた取組を実施していると回答した企業:52.2%(企業規模が小さくなると実施比率は相対的に低くなる) |
この数字って、結構衝撃的ではないでしょうか?
まず、①についてですが、なんと世の中で働いている従業員のうち、32.5%もパワハラを受けたことがあると回答しています。
これは、少なくとも、「自分はパワハラを受けている」と感じている人が、社会には多くいると言えるのではないでしょうか。
ただ、この数字に対しては、「実際にはパワハラではないのに、その人自身がパワハラだと思い込んでるだけでしょ?」という反論を言う人もいると思います。
ここで、②の数字が参考になります。
実際にパワハラに該当する相談が従業員からあった会社は、なんと調査対象の企業の全体の36.3%もあるとわかっています。
ここでいうパワハラに該当する相談とは、「従業員から企業に寄せられたパワハラに関する相談」ではなくて、「従業員から企業に寄せられたパワハラに関する相談のうち、それが実際にパワハラに該当していた相談」となります。
そう考えると、多くの会社で少なくとも1件以上のパワハラが起きているということになります。
さらにいえば、パワハラを我慢している従業員も多い(この点は後述します)ので、実際にはかなりの数のパワハラが社会に蔓延しているということになります。
そして、この現状であるにも関わらず、③の数字を見てもわかるとおり、パワハラの予防・解決に向けた取り組みを実施している企業は全体の半数程度しかありません。(特に企業規模が小さいほど、取り組みができていない企業が多くなります。)
つまり、ここで何が言いたいかというと、想像以上にパワハラというのは自分の身近で起きているものであり、「私はパワハラを受けているかもしれない…」という人の中には実際にパワハラに該当している例も多いと推察され、さらには企業側の助けを待っていても助けてくれない可能性も高いということも言えるわけです。
だからこそ、「私はパワハラを受けているかもしれない…」と思ったら、自分で対処法を知り、身を守ることが大事だということになるわけです。
(2)パワハラが発生してしまう理由
パワハラが発生すると、次のように、各方面に悪影響が発生します。
【パワハラが発生した場合の悪影響】 ①パワハラ被害者 ②パワハラ行為者 ③パワハラが発生した会社 参考:向井蘭(2020)『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』ダイヤモンド社 |
パワハラは、被害者への影響について語られることが多いですが、実は行為者にとっても会社にとっても、大きな負の影響につながることもありうるわけです。
さて、誰もが得をしないパワハラですが、なぜ、発生してしまうのでしょうか?
著書には次のとおり、書かれています。
現在、多くの会社が、相談窓口の設置、規程づくり、研修会などで対応しようとしています。
しかし、型通りのやり方では、パワハラをする人は変わらないでしょう。「無自覚パワハラ」がほとんどだからです。
私は企業から依頼を受け、「パワハラ予防研修」を行っています。
100人程度の管理職が参加した場合、人事部がパワハラの「注意人物」としてマークしているのは20人弱、「要注意人物」はそのうち10人程度です。しかし、研修を熱心に聞くのは関係ない80人のほうで、「注意人物」「要注意人物」は「自分に関係ない」と思っています。ですから会社としては対応が難しいと言えます。
引用:向井蘭(2020)『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』ダイヤモンド社
そう、多くの場合は、自分がパワハラをやっているという自覚がないまま、パワハラが行われていることが多いのです。
私は先日、こんなツイートをしました。
パワハラをする人の多くが、
無自覚で自分には関係ないと
思ってるから、解決が難しい。むしろ、部下を育成していると
考えていたりすることも多い。つまり、自分は正しいことを
していると思っているということ。もしかしたら、私たちも正しさを
貫くことで誰かを傷つけている
のかもしれない。— ぽん乃助@心理学×HSP働き方戦略(ブロガー&Vtuber) (@suke_of_pon) June 2, 2020
実際に私の会社にもあったパワハラの事例ですが、パワハラの行為者は、嘘偽りなく「部下の育成を一生懸命やっている」と思っていたりすることもあります。
ただ、私自身もパワハラを受けた経験からすると、意識的なパワハラも実際には存在しています。
「この程度であれば大丈夫だろう」というグレーゾーンを見極めた(証拠のこらない形での)攻撃や会社での立場を利用した明らかなパワハラも、実際には見たり経験したりしています。
ともあれ、パワハラは結構な頻度で起きていて、パワハラの行為者にとっては無意識的に行われている場合もあることが、ここから分かるのではないでしょうか。
言い換えると、「私は大丈夫」だと思っていても、いつパワハラの被害者になるのかわからないですし、現在進行中で自分自身がパワハラをしているいる可能性もあるということになります。
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なぜ、パワハラ被害者は相談せずに泣き寝入りしてしまうのか?
私自身、パワハラを受けた経験がある身として言えるのは、なかなかパワハラの相談というのは難しいということです。
平成28年度の厚生労働省の調査「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」をみても、数字としてそのことが明らかになっています。
【パワハラ被害に関する相談の実態】 ①過去3年間にパワーハラスメントを受けたと感じた者が、「何もしなかった」と回答した比率:40.9% ②その理由として「何をしても解決にならないと思ったから(68.5%)」、「職務上不利益が生じると思ったから(24.9%)」と回答した比率が高い(複数回答可) |
当時の私を振り返ってみると、アンケートにもあるとおり、「誰に相談しても変わらない」という気持ちは非常に強かったです。
精神的に追い込まれると、周囲が敵に見えてくることも多く、誰かを信用して相談するというのは、非常に難しくなります。
また、これもアンケートにあるとおり「相談したら会社に知れ渡って自分の居場所がなくなるかもしれない」という気持ちも強かったです。
当時、私は入社1年目ということもあり、立場的にも精神的にも、「登竜門で耐えなければいけない。ここで弱音を吐いたら終わりだ。」という気持ちが非常に強かった面もありました。
そして、「自分が悪いのかもしれない」という気持ちも非常に強く、こうした心理的な状況から、私は誰にも相談することができませんでした。
恐らく、パワハラを相談できない人の多くが、同様の気持ちを抱えている人が多いのではないかと思います。
このことを踏まえ、パワハラを相談できない理由を過去の私を振り返り、次のとおり考察してみました。
【パワハラを誰にも相談できない理由】 ①パワハラの基準が明確にわからない ②パワハラをされた証拠を持っていない ③誰に相談すればよいのかわからない ④相談する気力さえ失っている(精神疾患などに陥っている) |
私はこの4つの理由から、「誰に相談しても変わらない」「相談したら会社に知れ渡って自分の居場所がなくなるかもしれない」「自分が悪いのかもしれない」という気持ちが起きたのだと思っています。
逆に言えば、この4つの問題を解決することができれば、パワハラを対処できるのではないかと私は考えています。
特に、空気を読みすぎてしまい、他人に相談することが苦手なHSPの人にとっては、これらの問題を払拭できないと、パワハラを我慢して泣き寝入りしてしまう可能性が高まるのではないかと思っています。
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HSPの人がパワハラされた場合の対処法とは?
(1)パワハラの基準を知る
2019年5月、企業・職場でのパワハラ防止を義務づける「改正労働施策総合推進法」(通称:「パワハラ防止法」)が成立し、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から対応が義務づけられます。
そして、この「パワハラ防止法」では、パワハラの基準が明確に示されたということが話題になりました。
まずは、この法に照らし合わせながら、著書に基づき、パワハラの基準を解説します。
【パワハラの3つのポイント】 ①優越的な関係を背景とした言動 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの ③労働者の就業環境が害されるもの
【パワハラの6つの行動類型】 ①身体的な攻撃 ②精神的な攻撃 ③人間関係からの切り離し ④過大な要求 ⑤過小な要求 ⑥個の侵害 参考:向井蘭(2020)『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』ダイヤモンド社 |
もし、「自分がパワハラかもしれない…」と感じたら、これを見ることで、パワハラに該当するのかどうかある程度、見えてくるのではないかと思います。
パワハラに該当するのかどうか、あらかじめ把握することができれば、パワハラの相談に踏み切れる人も多いのではないかと思います。
(2)パワハラの証拠を持つ
パワハラを相談するにあたって、「パワハラをされたという証拠」を持つことは非常に大事になります。
証拠にとって重要なのは、5W1Hがしっかりと分かることです。
なので、一番ベストなのは、録音と記録の両方をすることです。
ただ、私の実体験からすると、実際にパワハラをされているときって、記録する元気もなかったりするものです。
なので、録音の日時さえわかれば、録音だけでも十分だと思っています。(録音の日時が分かれば、5W1Hが明確になるので。)
最近の録音機(ボイスレコーダー)は、スーツの内ポケットでもクリアに録音できますし、ワンタッチで録音を開始できるので、パワハラで苦しんでいる方には録音での証拠の記録をおススメします。
(3)パワハラの相談先を知る
さて、パワハラを受けていて、周囲から認知されていたとしても、基本的には誰も助けてくれません。
なぜなら、他人のパワハラを告発するのも、リスクが伴うからです。
だからこそ、基本的には、パワハラ被害を受けている場合は、自分自身で相談する必要があります。
ただ、「どこに相談すればよいのかわからない…」という人も多いことでしょう。
そこで、パワハラの相談先を、次のとおり整理しました。
【パワハラの相談先】 ①自分の会社の相談窓口や人事部 ②外部の相談先 |
パワハラ被害を受けていると、「自分の会社に相談しても変わらない…」と思っている人も多いかもしれませんが、相談窓口に直接申し入れると結構動いてくれるものです。
あくまで、私の会社の事例ではありますが、中小企業であるものの、相談窓口に申し入れたことで、具体的な人事の処遇がなされたことがあります。
なので、パワハラに困っていれば、相談してみる価値はあると考えています。(パワハラの証拠があれば、より動いてくれる確率は高くなると思います。)
(4)自分のメンタルの状態に気を払う
私自身、パワハラを受けた結果、うつ病の診断を受けましたが、このように実際にメンタルが弱っていて、そもそも誰かに相談する気力さえ失っている可能性もあります。
精神疾患の場合は、パワハラの相談はおろか、そもそも休職すべき状況にまで追い込まれている可能性まであります。
そのため、一番大事である自分の命を守るため、心身に何らか悪影響が出ている場合は、まずは病院での診断をおススメします。
参考までに、精神疾患例のひとつとして、うつ病の基準を以下のとおり掲載します。
【うつ病の診断基準】
●下記の①と②のどちらかに当てはまり、かつ、①~⑨のチェック項目のうち、5つ以上の症状がある
&
●症状が一日中、かつ、2週間以上続いている<主となる症状>
①気分の落ち込みが続いている(抑うつ状態)
②何事にも興味が持てず、楽しいはずのことが楽しめない<そのほかの症状>
③よく眠れていない
④食欲がない。または、食べすぎてしまう
⑤疲れやすい。または、気力がない
⑥思考力や集中力が落ちている
⑦動作や話し方がゆっくりになっている
⑧何でも自分のせいにし、責めてしまう(自責感)
⑨生きていても、しかたがないと思う引用(一部改変):総監修 尾崎紀夫(2016)『よくわかるうつ病 診断と治療、周囲の接し方・支え方』NHK出版
そして、厚生労働省のもと、労働者向けの心の相談窓口「こころの耳」も設けられていますので、「しんどいけど誰に相談すればよいのかわからない…」という方は、こういった機関を活用することもおすすめします!
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HSPの人が避けるべき(入社NGな)パワハラが起きやすい会社の特徴とは?
誰かに相談することや殺伐とした環境が苦手なHSPの人にとっては、そもそもパワハラが起きやすい会社は避けるべきだと思っています。
これまで、パワハラの具体的な対処法をお伝えしてきましたが、パワハラを対処できたとしても、心身の傷は癒すのに時間がかかります。
そこで、著書を参考に、パワハラが起きやすい会社の特徴を、次のとおりまとめました。
【パワハラが起こりやすい組織】 ①社長個人の思想 ②不安定な収益構造 ③顧客が少ない ④閉鎖的な事業構造 参考:向井蘭(2020)『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』ダイヤモンド社 |
実際、就職活動や転職活動をしていても、企業は良い面しか見せないので、入社してみないと良い雰囲気かどうかを見抜くことはできません。
その一方で、上記の事項は、会社の経営状況や収支などを見ることで、ある程度はつかめます。
なので、その会社を避けるべきかどうかを考慮するにあたって、上記の事項は非常に参考となるのではないかと思っています。
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしょうか。
私自身、パワハラの被害を受けた経験もあり、非常にしんどいと思ったのは、「誰も助けてくれない」ことなのです。
つまり、心身が疲弊している中で、なんとか気力と時間を振り絞って、誰かに相談しなければいけないことが、非常に大変です。
心理学的な用語でいうと、「学習性無気力感」とも呼ばれますが、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれると、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなります。
うつ病の人が「助けて」と言えないのも、こうしたことが理由となります。(このことについて、以前に詳しく記事に書いたことがありますので、気になる方は以下のリンクからご覧ください。)
うつ病の人はなぜ「助けて」ではなく「死にたい」と訴えるのか?
先述のとおり、パワハラ被害で悩んでいても誰にも相談できない人は多く、「具体的にどうすればよいのかわからないし、どうすればよいのか調べる気力もないから」という人がおおいのではないかと思っています。
だからこそ、今回は、著書や私の経験をもとに、正確かつ具体的な情報を伝えられればと思い、記事執筆してまいりました。
パワハラの被害を受けるのは、心身として本当にツラいことであることを、身をもって経験しています。
だからこそ、今回の記事が、パワハラ被害で悩んでいる人にとって一助になりましたら、それより嬉しいことはありません。
最後に、本記事の執筆にあたって、参考著書『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』は、漫画でわかりやすくパワハラの基準を理解することができますし、2020年6月から順次施行されるパワハラ法にも対応しており、管理職の立場の方に限らず、パワハラを理解するにあたって非常に参考になる一冊です。
弁護士の著者が、法と実情の曖昧な部分も丁寧に解説しているため、パワハラをよく理解したい方は、ぜひ著書のほうもお読みいただければと思います。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
また次回も、よろしくお願いいたします!
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