HSPの人が不安でグルグル思考に陥ったときの3つの対処法とは?
HSPとは、繊細で敏感な気質の人を指します。(HSPの詳しい解説は、こちらからご覧ください。)
さて、HSPの人は繊細で敏感な気質をきっかけに、不安を抱えやすいと言われています。
私自身も、一度不安な気持ちを抱えてしまうと、その思考がグルグルと頭の中を巡り、負の状態から抜け出せないことがあります。
こんなこと、皆さまも経験したことがあるのではないでしょうか?
そこで今回は、不安な気持ちでグルグル思考に陥ってしまったときの3つの対処法をお伝えします。
ぜひ、最後までご覧ください!
この記事の目次
「HSP」と「不安」の関係性とは?
(1)「HSP」と「不安」の関係性について
HSPの人は、繊細で敏感な気質がゆえに、不安を抱えやすいと言われます。
ただし、HSPの人が全員、不安を抱えているかというと、そうではありません。
そこで、まずは「HSP」と「不安」の関係性について、お話したいと思います。
著書には、次のとおり述べられています。
HSPは、繊細な性格(気質)をもつ人のことです。生きづらさはあるものの、治療が必要なものではありません。
しかし、そのHSP気質を「一階部分」とするなら、二階・三階部分にさまざまな症状や問題行動が「乗ってしまう」こともあります。例えば、一階部分がHSP、二階部分が不安症、三階部分が不登校などのように、HSPをベースに、さまざまな症状や問題行動が現れるのです。逆に言えば、不安症・抑うつ症状などの背景に、HSP気質があることも見受けられます。
これらの場合、一階・二階・三階それぞれに対応することが重要です。二階・三階については、医学的な処置や心理師による指導が必要なことも多いのです。
(中略)
実際、HSPであるほど、抑うつや不安が高いことが、多くの研究で確認されています。
引用:串崎真志(2020)『繊細な心の科学ーHSP入門ー』風間書房
【上記画像はクリックすると拡大表示されます】
ここでも言われているとおり、HSPはそもそも病気ではなく気質を指す言葉なので、自分がHSPだからと言って治療の必要はありません。
ただし、HSPの気質をきっかけに、不安を抱えやすいことが示唆されています。
ここで勘違いしてほしくないのは、「HSP」と「不安」は関連性はあるものの、生きづらさに直接つながっているのは「HSP」ではなく、「不安」の感情ということになります。(著書では、「1階部分」「2階部分」などと区別していますね。)
ということで、今回は、HSPの方の中でも、不安に悩む方に向けた記事となります。
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「不安」な気持ちを抱えやすい人の共通点とは?
(1)不安な気持ちのグルグル思考について
不安を抱えやすい人は、何か心に気がかりがあると、グルグルと頭の負の思考が止まらなくなる時がありますよね。
そうすると、なかなか仕事が手につかなくなったりします。
心理学の世界では、この状態を「反すう」と呼びます。
思い込みによって「どうせやっても無駄」と考えて自発的に行動しないことが増えると、ポジティブな感情を経験することが減っていきます。そうすると、相対的に失敗している感覚が強まり、ネガティブなことをグルグルと考えるループにハマりやすくなります。このグルグル考えることを反すうと言います。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
それでは、この不安という感情はどこから生まれるのでしょうか。
心理学の世界では、次のとおり考えられています。
パニック症や社交不安症などの不安症では、特定の場面に対して不安反応が生じるようになると、その後、その場面を予測したときや実際に直面したときに生じる身体反応や感覚に敏感になり、わずかな身体の変化を察知して気づくようになります。
(中略)
社交不安と身体反応の関係について行われた複数の研究をまとめてみると、社交不安の強い人と低い人の心拍数には差がないことを示す研究が多いです。一方、心拍の解釈の仕方に違いが見られ、不安が高い人は心臓がドキドキしてくると、「また失敗して、みんなが驚いた顔で見て、評価が悪くなってしまう」「恥ずかしい思いをするんじゃないか」と考える(解釈バイアスといいます)のに対して、不安の低い人は異なった考え方をします(例えば、ワクワクしてきた)。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
よく、不安になると「心臓の鼓動が早くなる」とか言ったりしますが、不安を抱えやすい人とそうでない人において、心拍数に差がないことが分かっています。
ただ、不安になりやすい人は、特定の場面を想像したり、直面したりするときに、身体反応や感覚に敏感になることが分かっています。
さて、不安な気持ちのグルグル思考の正体が見えてきたところで、そうした思考を抱えやすい人の共通点を考えていきます。
(2)不安な気持ちを抱えやすい人の共通点について
さて、不安な気持ちでグルグル思考に陥ってしまいやすい人は、次のように考える人が多いのではないでしょうか?
【不安な気持ちを抱えやすい人の共通の思考】 ①「不安なことを考えないようにしよう!」 ②「不安な場面から逃げなきゃ!」 |
ただ実は、これらの思考は、逆効果につながる場合があります。
①「不安なことを考えないようにしよう!」については、心理学の世界では「白熊効果(思考の皮肉過程)」とも呼ばれ、著書で次のとおり述べられています。
失敗体験やキツいことを言われた場面を思い出し、「周りの人から変なふうに思われたのではないだろうか」「なんであんなことを言われなければならないんだ」「なんであんなことをしてしまったのだろう。~と言えばよかった」というように、「なんで」という考え(Why思考)や自分を批判的に捉える考えが数珠つなぎのように連なり、考えるのがつらくなるために、内容を深く考えるのを止めようとします。回避の一種です。しかしながら、考えるのをやめようとするとその考えはますます「顔を出す」のが心理学的な原理です。これを「白熊効果(思考の皮肉過程)」といいます。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
②「不安な場面から逃げなきゃ!」についても、著書で次のとおり述べられています。
恐れている刺激や場面を回避していると、怖さが膨らみ、後ろ向きな考えが増幅します。例えば、パニック発作を恐れて電車に乗ることができない人であれば、「発作が起きて倒れてしまうのではないだろうか」、「耐えきれないほどの怖さが襲ってくるだろう」、社交不安症の人であれば、「震えや汗を周囲の人に気づかれて、周囲の人から変に思われるのではないか」などの考えが浮かびます。これらは頭のなかにある過去の記憶に基づいた思考であり、この思考と回避行動が相互作用して不安反応が持続しています。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
この①と②の思考は、いずれも「回避」的な思考ですが、実はこの思考は余計に不安を増幅してしまうことにつながることがあるのです。
そのため、不安な気持ちでグルグル思考に陥ってしまいやすい人ほど、不安な刺激や場面に立ち向かうことが必要になるわけです。
ただ、単純に「逃げずに戦え!」と言っても、すごくハードルが高いですよね。
そこで、具体的な対処法をお伝えしていきます。
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HSPの人が不安でグルグル思考に陥ったときの3つの対処法とは?
(1)不安な出来事を、あえて“具体的に”考えてみる
実は、不安でグルグル思考に陥っているときほど、不安な出来事を思い出すこと自体がつらくて、深く考えようとせず、抽象的に考える傾向にあるそうです。
著書には、次のとおり述べられています。
Watkins(2016)は反すうの対象となっている出来事について「具体的に」「体験的に」考えること(How思考)が、反すうを弱めることに効果的であることを実証しました。どのような状況で、まず誰が何と言い、それに対して自分がどのように行動したのか、その場面の詳細をたどっていきます。映画のシナリオが書けるほど詳しく明らかにしていくと、ただ反すうしている時には気づかなかった現実の情報を入手できます。これは誰かと話しながら行うとやりやすいかもしれません。カウンセリングの場面では支援者と一緒に対話しながら進めることができます。具体的に振り返ることができると、実際にどうだったのか検証してみたり、調べてみたりするなど、行動を起こすことにつながり、反すうが弱まってきます。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
ここに書かれているとおり、不安でグルグル思考に陥ったときは、出来事については“具体的に”考えることで、緩和されることが分かります。
ただ、私の実体験でもありますが、不安な出来事を考えるときって、どうしても深く考えるのってツラいですよね。
だからこそ、「誰かに相談すること」が効果的なのです。
ひとりで不安を抱え込むと、どうしても不安のグルグル思考が止まりませんが、誰かに相談すると不安が和らぐときってありますよね?
まさに、この理由の一つは、誰かと一緒に不安を共有すると、不安な出来事を“具体的に”考えやすいからだと考えています。
まとめると、不安な出来事は誰かに相談し、“具体的”に考えてみることが、不安のグルグル思考を弱めることにつながるのです。
(2)不安な場面に、あえて立ち向かう
先ほどは、不安な気持ちを抱えやすい人の共通点として、苦手な場面を回避する傾向にあると言いました。
また、苦手な場面を避けると、不安を増幅することにつながるとも言いました。
そこで有効とされるのは、不安な場面にあえて立ち向かうことなのです。
著書には、次のとおり述べられています。
経験によって身についた恐怖や不安反応を和らげて、やりたいことをできるようにするために、恐れている刺激や場面と向き合うエクスポージャーという方法が用いられます。「曝す」という意味の英語である「expose」に基づいています。恐れている対象を「回避」するのではなく、「接近」するのです。恐れている場面や刺激と向き合ってしばらくすると、馴れてきて不安反応が落ち着いたり、現実の情報が手に入って、「事前のネガティブな予測と現実のズレ」に気づくことができたりします。「思っていたほど身体の反応が出なかった」「思っていたより話すことができたし、相手の人もにこやかだった」など、エクスポージャーによって現実の情報を入手すると、頭のなかに、新たな情報が入力されます。その結果、予測していたこととは異なる情報が得られ、後ろ向きな思考や不安反応が改善していきます。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
現実の世界でも「場数が大事だよ」と言われることがありますが、心理学的には「エクスポージャー」と言われ、不安な場面に立ち向かうことはすごく大事だということなのです。
だけど、やっぱり不安な場面に立ち向かうのって怖いですよね。
でも、不安な場面を回避する方が、その後の負の感情は長引いてしまうのです。
著書には、次のとおり述べられています。
恐れている対象に直面すれば、不安反応は一時的に強まります。そこで、その反応がどのように変化していくかを知っておくと役に立ちます。(中略)脅威刺激に直面すると、不安は上昇していきます。その不安は「どんどん強まってずっと続く」ように思われますが、私たちの身体はそのようにできていません。ある程度ピークの強さが続いたあとに、不安は自然に弱まっていきます。
(中略)
ただ、こわくて途中で逃げてしまったり、回避してしまったりすると一気に不安が下がり、安心しますが、十分に下がりきらないため、その場面や刺激に対する恐怖はジワジワ持続します。回避で得られる安心感は一時的なものですが、スッと楽になる感覚があるので、クセになります。長期的に見たときに改善を邪魔するの(悪さをする)のが「回避行動」なのです。
引用:岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
そう、つまりは、一時的な安心を求めて、不安な場面を回避するクセが身についてしまうと、不安な場面に対する恐怖心は長期的に残ってしまうのです。
だからこそ、不安な自分を克服するためには、立ち向かうという行動が必要になってくるのです。
(3)他者に親切にする
ここまでは、不安な場面や出来事に向き合うという観点で、対処法をお伝えしてきました。
とはいえ、エクスポージャーの効果は高いと言われるものの一時的な精神的負荷が大きいため、治療としてエクスポージャーを実施する人の中には、途中で断念する場合も多いようです。
そんな中で、不安症などの治療法は改良が続けられており、不安を緩和する新たな治療技法の可能性の一つとして、「他者に親切にすること」が挙げられています。
著書には次のとおり、述べられています。
例えば、(不安症やうつ病の)新たな治療技法の可能性として、「他者に親切にする」ということも考えられています。他者に親切にするためには、他者に注意を向ける必要が生じ、自己注目が緩和されます。さらに、他者に親切にするという行動は脳の報酬系(ごほうびをもらったときに働く部位)を活性化させることもわかっており、自分にとってもメリットがあるのです。
引用(一部改変):岡島義・金井嘉宏(2020)『使う使える臨床心理学』弘文堂
「他者に親切にすること」は、過度に自分に向けられた意識を緩和し、さらには脳の報酬系を活性化させるため、不安の軽減につながりうるというわけです。
不安に悩む方はぜひ、実践に移してみてはいかがでしょうか?
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか?
最近は、コロナ禍というこもとあり、人々が抱えている「不安」に対して、注目されることも多くなりました。
そのため、「不安」に対する対処法は、今後もどんどん研究が進んでいくと思います。
恐らく、「自分がHSPだと知った人」の多くが何らかの生きづらさを感じていて、「不安」の感情を感じている人も少なくないのではないかと思います。
そのため今回は、不安でグルグル思考に陥ったときの対処法をお伝えしました。
なお、今回記事執筆で参考した文献について、下記のとおり紹介します。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
また次回も、よろしくお願いいたします!
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