HSPの人はなぜ仕事で悩むのか?悩みから脱する3つのヒントも
本ブログでは、繊細で敏感な気質と言われるHSPの方などに向けて、心や生活での悩みから脱するためのヒントをお伝えしています。
さて、最近Twitterで、「HSPで仕事に悩んでいる」という質問を寄せられることがあり、タイムラインを見ても仕事で悩んでいるツイートを見ることが多くなりました。
Googleの検索でも、HSPというワードに加え、仕事の悩みを併せて検索される方が多い傾向にあります。
そこで今回は、HSPの人がなぜ仕事で悩みやすいのかを考察し、悩みから脱するためのヒントをお伝えしていきます!
この記事の目次
HSPの人が仕事で悩みやすい理由は?
さて、前回の記事では、「HSPブーム」の問題点について考察しました。
ここでは、「HSP」について何が正しくて・何が正しくないのかなどを、具体的にお伝えしていきました。(詳細は以下のリンクから当該記事をご覧いただけます。)
「HSPブーム」はなぜ問題視されたのか?【行動経済学で考察】
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そしてこの記事では、「HSP=生きづらい」ということは学術的に断言できるものではなく、あくまで「自分がHSPだと思う人=生きづらい」と説明しました。
HSPは病的概念ではないため、医者など(他者)から診断されるものではありません。
「自分がHSP(高感受性群)かどうか?」というのを測るためには、一般的には「HSP尺度」によるチェック表に基づき、自分が自分でHSPかどうかを調べることになります。(ちなみに、学術的分野においては遺伝子や生理的な反応から調べる手段もあるようです。)
そのため、そもそも客観的に他人と比べて自分が感受性が高いかどうかということを調べることは難しいわけです。
さらには、自分がHSP(高感受性群)だとしても、学術的には環境の影響を受けやすいことは分かっていますが、それが生きづらさにつながるかどうかは証明されていません。
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とはいえ、Google検索の傾向をみてみると、「HSP」というキーワードとともに、「対処法」「仕事」「適職」「改善」「生きづらい」など、生きづらさに関連する言葉が検索されているわけです。
また、「仕事」「適職」という言葉が検索されていますし、Twitterなどで「HSPで仕事に悩む」といったツイートをよく見ることを踏まえると、特に仕事に悩むHSPの人が多いと言えるのではないかと思います。
ところで、仕事で悩みを抱えている人は、全体でどれくらいいるのでしょうか?
国や会社で行われているアンケートでは、以下のことが分かっています。
・現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合:58.0%(厚生労働省『労働安全衛生調査(実態調査)』より) ・仕事をしている中で「悩みがある」と回答した割合:83%(エン派遣『2020年4月調査』より) ・「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答した割合:88.9%(BizHits『2020年10月 調査』より) |
そう、ここで分かるのは、「自分がHSPかどうか?」はさておき、世の中全体では仕事で悩んでいる人が多いということが分かります。
先ほどお伝えした通り、HSPの人が仕事に悩みやすい理由は、HSPの気質によるものということは、学術的に断言できません。
しかし、仕事に悩んでいる人が、「HSP」という言葉に出会い、自分がHSPだと自覚する人も多いのではないでしょうか?
つまりは、仕事の悩みを入り口に「自分がHSPだ」と気づいた人が多いからこそ、仕事に悩むHSPの人が多いと言えるのではないかと私は考察します。
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仕事の悩みから脱する3つのヒントとは?
(1)「事例性」と「疾病性」に分けて考える
私のもとには、「サイトで自分が中程度のHSPだと診断されたのですが、どのように自分と向き合ってよいのでしょうか?」という質問が寄せられたことがありました。
ほかにもいくつか質問や悩みをお受けすることがあるのですが、『自分はHSPですが、どのように悩みを乗り越えていけばよいですか?』といった趣旨の質問が非常に多い印象です。
さて、メンタルヘルス不調の方の労働を考えるにあたっては、「事例性」と「疾病性」を切り分けて考えることが重要とされています。
「事例性」:具体的な困ったこと、たとえば、遅刻が増えた、身なりがだらしなくなった、書類の提出期限が守れなくなったなど、周囲からみて事実として捉えられる、いわば「困った出来事」があるかどうかという視点 「疾病性」:症状や病名などにフォーカスを当てて、対象を見ていく考え方 引用:健康保険組合連合会「働き盛りのメンタルヘルス vol.26」(アクセス日:2021年3月21日) |
そして、「疾病性」は医者などの専門家が取扱う分野なので、職場などでは「事例性」を重視して労働者の悩みにアプローチしていくことが原則です。
しかも、HSPは精神疾患ではありませんので、「疾病性」のアプローチは当てはまらないので、「HSPは●●したら改善される」というのは断言できません。
それでは、何が大事かというと、「具体的に自分は職場などで何が困っているのか?」ということにアプローチすることが大事になります。
そして、原因(仕事内容・人間関係 など)を掴んでから、適切な行動(社内での相談や転職の検討 など)を取ることで合理的な選択ができるわけです。
つまりは、HSPにとらわれ過ぎると自分が具体的に何に悩んでいるのか見えなくなってしまうため、適切な行動がとれなくなる可能性もあるわけです。
(2)自己承認欲求のハードルを下げる
先刻お伝えしたとおり、HSPの人に限らず、世の中で仕事に悩んでいる人は非常に多いわけです。
さて、それでは海外の傾向と比べると、これはどうなのでしょうか?
内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)」では、「今の職場生活の満足度」の国際比較について、次のことが分かっています。
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若者を対象とした調査ではあるものの、諸外国に比べて、日本の職場への満足度は非常に低いことがわかります。
これは、日本の会社や労働観の在り方(雇用・育成・休暇・労働時間・給与・待遇 など)に問題もあると言えるかもしれません。
ただ、こうした社会の問題に加え、個人の気の持ちようについても、日本の職場への満足度が低い理由があるのではないかと私は考えています。
あくまで私の仮説ですが、「仕事などで承認欲求が満たされていない人が多い」ということが一つの原因にあるように思えます。
余談ではありますが、最近、社会で一定権威がある人(医者や学者など)であってもYouTubeやSNSにまで進出して活動される人が多いのは、こうしたことが背景なのかもしれません。
SNSや著書などにおいて、心理界隈では「自己肯定感」や「アドラー心理学(嫌われる勇気)」がかなり流行りましたが、この背景には日本では「他者から承認されていない」という普段からの鬱憤が溜まっている人が多いことが挙げられるのではないでしょうか。
私も普段の仕事の生活に置き換えてみると、普段から誰かから褒められることはあまりないというのが、普通になっている気がします。
私は少し前に、こんなツイートをしました。
転職・退職・独立ツイートは伸びる。もちろん、純粋に応援する意味での「いいね」もあると思う。だけど、自分の仕事に満足いってない反動で、「いいね」を押す人もいると思う。だけど、思った以上にみんな立派な仕事をしてる…周りが褒めてくれないだけで。今日は華金、皆さん本当にお疲れさまです。
— ぽん乃助@繊細な人の働き方戦略家/ブロガー (@suke_of_pon) March 12, 2021
恐らく、このような日本の社会背景の中で、他人の働き方がキラキラしているように見えている人が多いのではないか?
そして、立派な仕事をしていてもあまり目立つことができず、他人からもあまり褒められていないので、「自分の仕事の意義は?」と考えてしまう人が多いのではないか?
あくまで私の感覚ですが、こういう思いを人々が抱えているのではないかと私は思うわけです。
なので、仕事で悩む人にとって、「自己承認欲求」のハードルを下げることも一定有効なのではないかと考えます。
「自己承認欲求」のハードルを下げることについては、ベストセラーとなった著書『嫌われる勇気』が参考になると思います。
以前に、本ブログで要約記事を書いたことがありますので、気になる方は以下リンクよりご覧ください。
(3)未来の選択肢を捨てる勇気を持つ
私は、本ブログで自分の未来の可能性を広げることは大事だと述べてきました。
しかし、自分の未来の可能性を広げれば広げるほど、どの道に進むべきか無駄に悩んでしまうという傾向があることが、行動経済学の実験で明らかになっています。
「未来の可能性を広げる」と言葉は非常に聞こえがよいものの、可能性にとらわれすぎると、悲劇を招く可能性もあるのです。
私はこのようなツイートをしました。
あと少しで30歳という区切りが見えてきて、時間の使い方はより効率的にしていかないといけないと感じています。
勉強・仕事・ブログ・動画・趣味など、今やっていることに、どのようにエネルギーを割いていくか…?
たまには真面目な話を誰かとしながら、生き方を再設計しないといけないですね。
— ぽん乃助@繊細な人の働き方戦略家/ブロガー (@suke_of_pon) March 21, 2021
私も自分の年齢が増すたびに、エネルギーや時間が有り余ることは無くなり、未来の選択肢を絞っていかなければ自己実現ができないな…と思うようになりました。
実験内容は省略しますが、行動経済学の名著である『予想通りに不合理』では、次のことが書かれています。
わたしたちはこの実験で、扉(≒未来の可能性)が閉じてしまわないようにあたふたとかけまわるのは愚か者のゲームであることを証明した。かけまわれば感情をすり減らすだけでなく、財布もすり減らすことになる。わたしたちに必要なのは、いくつかの扉を意図的に閉じることだ。
(中略)
もっと大きい扉(あるいは、大きく見える扉)は閉じるのに苦労する。新しい仕事やもっといい職場につながるかもしれない扉は、閉じるのがむずかしいかもしれない。自分の夢と結びついている扉も閉じにくい。特定の人との関係も、たとえどこにもつながっていないように思えても、なかなか閉じるのはむずかしい。
わたしたちは、扉をあけておきたいという不合理な衝動を抱えている。人間はそのようにできている。だからといって扉を閉じる努力などしないほうがいいというわけではない。
引用(一部改変):著 ダン・アリエリー/訳 熊谷淳子(2013)『予想どおりに不合理』早川書房
ここでいう、扉は私が加筆したとおり、「未来の可能性」を指します。
私自身も実感するところですが、現状に不満を抱いているとき、逆に未来の選択肢が多くて行動に移せないこともあるかと思います。
仕事に置き換えてみれば、年齢や立場にもよっても違う部分もあるとは思いますが、キャリアの選択肢を広げるだけではなく、目標(どこに向かうか)を絞って行動することも大事だと言えるのではないでしょうか。
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか。
HSPの人の中で働き方で悩んでいる方は非常に多いと思いますし、実際にSNSなどを見ていると、HSPの働き方についてアドバイスなどをしている方も多い印象にあります。
そこで今回は私なりに、HSPの人が仕事に悩みやすい理由を考察しました。
そして、仕事におけるアンケート調査や学問の知見などを踏まえて、仕事の悩みを脱却するためのヒントをお伝えしました。
冒頭に申し上げたとおり、「HSPの人=生きづらい」ということは断言することはできません。
しかし、HSPだと自認している人の多くに、仕事で悩んでいる可能性があることを無視してはいけないと私は思っています。
前回の記事では私の思いをお伝えしましたので、今回は割愛しますが、今後も仕事や生活で悩むHSPの人に有用な情報発信ができればと思います。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
また次回も、よろしくお願いいたします!
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