他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない2つの理由
HSPとは、生まれつき5人に1人は当てはまる、繊細で敏感な気質の人を指します。(詳しくは、こちらから解説をご覧ください。)
そして、私もHSPのひとりです。
HSPの人は、その気質がゆえに、仕事や生活において生きづらさを感じやすいと言われています。
また、発達障害を抱える人は、HSPとは全く概念が異なるものの、その特性が似ており、生活や仕事に「生きづらさ」を感じやすいと言われています。(発達障害とHSPの共通点や違いについては、こちらから解説をご覧ください。)
さて、Twitterなどでは、「あの人もHSPだ」「あの人は発達障害に違いない」というように、他人にHSPや発達障害の枠組みを当てはめる場面を散見します。
ただし、このように枠組みを当てはめるのは、いろんな観点から危険だと考えています。
実は、以前に私も仕事で悩みを抱えていたときに、「お前は発達障害の傾向がある!」と会社で言われたことがあります。
医者に相談したところ、発達障害ではなかったものの、その言葉を受けてとても苦しい思いをしました。
そんな経験を踏まえつつ、今回は、他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない理由について、お話ししたいと思います。
ぜひ、最後までご覧ください!
他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない理由とは?
(1)他人にHSPや発達障害を当てはめると、その人の人格や個性を見失うから
さて、昨今は、本やネットを通じて、心理学やメンタルの情報について、多くの方に知られるようになりました。
その証拠に、昔は精神的な病気については「ノイローゼ」や「うつ病」といった言葉でひとくくりにされていましたが、現在は詳しい病名についても一般の人にも知られるようになりました。
そういう意味では、精神的な苦しさについて、理解が広がってきたのはよいことだと思っています。
その一方で、中途半端な知識で、自分や他人を精神病などに当てはめるということをよく見るようになりました。
実はそれって、とても危険なことなんです。
例えば、調子が悪い人が、病院に行かずに自己診断で対応するのは危険なのはよくわかりますよね?
これはメンタルの分野でも言えることなんです。
そして、「HSP」や「発達障害」という言葉は便利な一方で、他人をその枠組みに当てはめると、その人の人格や個性を見失うことにつながります。
もしくは、HSPや発達障害とは違う病気が隠されているのに、それを見逃すことにつながる可能性もあります。
著書には、次のとおり書かれています。
職場におけるメンタルヘルス不調とは、労働者が心身・精神の不調をきたすことを意味しますが、何らかの疾患の程度や病状を疾病性と呼び、その疾病性などが原因となり、ある労働者が呈する「いつもと違う様子」を事例性と呼びます。
(略)
この疾病性と事例性の両視点から不調者の「今、ここ」について考えることは、就労可否の判断の際に大変重要です。
ただ、これらの疾病性は、症状や疾患の名前すなわち専門用語で表現されています。「抑うつ」「緘黙」などの用語は、カルテやメモにそのまま記入しやすく、伝達としては間接話法に近くなります。医療現場や学会発表などで病歴・経過をまとめる際には、これらの用語が多用されます。その一方、事例性は、その人がどんな様子なのか、具体的な状況について表現されています。状況の描写は、疾病性のように専門用語をつなぐのではなく、ありありと現状を描くような文章表現となります。
(略)
「口数も減り、いつもイラだっているように見える」ことの原因は様々なはずです。それは仕事に限らない。職場環境に限らない。疾病性の実態を診ずに、事例性を疾病性メガネで見ることは、誤った断定を生むリスクを高めてしまいます。
(略)
「新型うつ病」などの裏づけのない用語の流布や、発達障害への関心の高まりから、診断・病名でとらえがちな傾向が懸念されます。現在、「職場のメンタルヘルス不調」とされているものの中には、精神的な健康(メンタルヘルス)問題の範疇にないものが多く含まれてしまっています。
引用:小山文彦(2019)『精神科医の話の聴き方 10のセオリー』創元社
さて、上記をかみ砕くと、他人を疾病性(診断・病名)ですべてを当てはめようとすると、その人自身の特有の事例性(言動)を見失ってしまう可能性があるということです。
これは、「HSP」や「発達障害」にも言えることなのではないかと思います。
「HSP」や「発達障害」という言葉は、一定の人たちの特徴を当てはめることができ、とても便利な言葉です。
だけれども、「HSP」や「発達障害」を他人に当てはめすぎると、その人自身の人格や個性を見失うことにつながってしまうのではないかと考えられます。
さらには、「HSP」や「発達障害」以外の気質や病気の可能性も考えられるのに、その人の耳に「HSP」や「発達障害」という言葉が入ると、それ以外の可能性が排除されることにもつながりうるのです。
これが、他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない1つめの理由です。
(2)他人からHSPや発達障害を当てはめられると、苦しい思いをする場合があるから
さて、次は、他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない2つめの理由です。
先ほどは、HSPや発達障害を他人に当てはめる側の視点で見てきました。
今度は、HSPや発達障害を他人から当てはめられる側の視点で見ていきましょう。
私は、以前会社の上司に、「お前は発達障害だ!」と言われたことがあります。
だけれども、病院で診てもらったところ、発達障害ではありませんでした。
さて、私の経験を上記のとおり、2行で表しました…が、そのときの私の心の揺れ動きは、そんなものでは表すことができません。
私はその一言をきっかけに、「お前は普通じゃない」といわれている気分になり、私は不快感・焦燥感・不安感・悲壮感・絶望感など、たくさんのネガティブな気分を抱えることになりました。
その一方で、「自分は発達障害かもしれない…」ということで、いろんなことを挑戦する前に諦めてしまうようになりました。
そして、一番やっかいなのは、職場内で「発達障害」と言われたことにより、上司だけでなく、職場の周囲のメンバーからも「あの人は発達障害だ!」という目で見られるようになり、とても働きづらい状況になってしまったのです。
著書には次のとおり、書かれています。
例えば、「普段は快活で明るい社員が、最近は元気がなく、仕事にも意欲がわかないように見える」状況は、誰にとってもわかりやすいものです。具体的で直接話法に近い表現となります。しかし、同じ状況を「抑うつ的、意欲減退」のように疾病性視点で表した場合、伝わってくる情報量はかなり少なくなってしまいます。そればかりか、言語少なく意欲的に見えないことの理由を疾病性に求めている点が過度に限定的です。そのまま社内で伝達されていくことで、誰かの疾病性情報が一人歩きしてしまう恐れもはらんでいます。事例性はそのままに扱い、疾病性メガネで見すぎないことです。
引用:小山文彦(2019)『精神科医の話の聴き方 10のセオリー』創元社
つまり、他人の状況を特定の疾病性などに当てはめられることで、社内の他の人にも伝わりやすくなってしまうというわけです。
そうすると、当てはめられた身からすると、自分に対する自信もなくなってしまううえに、その場で仕事もしづらくなってしまうというわけです。
だからこそ、他人がHSPや発達障害な傾向が垣間見えても、口外すべきでないですし、本人に伝えるにあたっても細心の注意が必要だというわけです。
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HSPは自分で診断するもの、発達障害は医師から診断されるもの!
最近、このような質問をよく受けます。
「HSPはどこで診断を受けられますか?」
その答えは、HSPはどこに行っても診断を受けられるものではありません。
だって、HSPは気質であって、病気ではありませんから。
そして、「自分がHSPの傾向があるかどうか?」については、チェックリストをもとに自己診断するしかありません。(チェックリストはこちら)
なので、他者から自分のことをHSPだと認定されるものでもありませんし、自分がHSPだと分かっても他者に示すものでもありません。(詳細な理由については、記事にまとめたことがありますので、詳しく知りたい方は、下記リンクからご覧ください!)
その一方で、発達障害は医師からきちんと診断されるべきものです。
決して、素人が他者に対して「この人は発達障害だ!」と認定することは、あってはなりません。
「発達障害だ!」と上司から言われた私自身の経験からしても、当事者としては苦しいものであります。
まとめると、HSPは自分で診断するもの、発達障害は医師から診断されるものなのです!
「HSP」や「発達障害」という言葉は、他者から当てはめられる目的で使われるべきものでないのです!
著書には、次のとおり書かれています。
誰かの「今、ここ」の状況をありのままにとらえ、できるだけ実態に忠実に表現することから単視眼的な解釈は減るでしょう。
いつもと違う、周りと違うことは、多様な変化、特徴であり、そもそも単純化や集約が当てはまらないということについて、新たに認識してみるとよいでしょう。
引用:小山文彦(2019)『精神科医の話の聴き方 10のセオリー』創元社
人はみな、色んな人格や個性を持っていますので、「●●だ!」と決めつける前に、まずはありのままの状態を受け入れることがとても大切なんだと思います。
これは、他人に対してのみならず、自分に対しても言えることです。
私自身はHSPであるものの、HSPは自分の人格や個性の一部分に過ぎないと思っています。
そして、HSPは自分の弱点を克服したり長所を伸ばしたりするためのヒントであり、それ以上でもそれ以下でもないと考えています。
人間の人格や個性は、とても複雑で、HSPのひと言で決めつけられるものでもありません。
自己分析は、自分が幸せになるためにとても大事なことであるものの、とても奥深いものなのです。
この辺を認識しているかどうかという点については、私がHSPの方々に会ってきて、うまくいっているHSPとそうでないHSPの違いの一つでもあるように思えます。
このことについては、以前に本ブログの記事にまとめたことがありますので、気になる方はぜひ、以下のリンクからご覧ください!
HSPで仕事や人間関係がうまくいく人といかない人の2つの違い
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まとめ
●他人にHSPや発達障害を当てはめてはいけない理由とは?
●HSPは自分で診断するもの、発達障害は医師から診断されるもの!
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おわりに
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか。
今回は、私の会社での経験を踏まえ、他人に対して「HSP」や「発達障害」などを当てはめてはいけない理由を述べてきました。
確かに「HSP」や「発達障害」などの心理学的な用語は、その人の状態をカテゴライズする言葉としてはとても便利です。
だけれども、こういう便利な言葉って、後々になっても、その人に貼られたレッテルのように残り続けてしまうのです。
もちろんのこと、「HSP」や「発達障害」だと知ることができると、自分の「生きづらさ」を克服するヒントをたくさん得られるようになります。
でも、人間の人格や個性は一人ひとり違うし、本当に複雑なので、もっともっと自分の内面や他者の内面に向き合っていく必要があると思うのです。
それこそが、幸せな生き方や働き方につながるのではないかと思い、記事としてまとめてきました。
アウトプット大全やインプット大全の著者としても有名な精神科医である樺沢紫苑さんは、次のツイートをされていました。
「メンタル疾患は、絶対に治りますか?」という質問をしているうちは治りません。
私の経験では、1年365日、病気のことを考えてる人は、どのメンタル疾患も治りません。
「治す」のではなく、病気へのとらわれを捨て、気づいてたら「治っていた」というのが自然な治り方です。#うつ病
— 精神科医・樺沢紫苑@インプット大全&アウトプット大全 シリーズ52万部突破 (@kabasawa) August 22, 2019
私自身も、うつ病を患っていた時期がありますが、本当に同感できるツイートでした。
よく言われることではありますが、精神的な疾病は、「治す」というよりも「うまく付き合う」ものなのです。
症状や疾患の名前にとらわれすぎると、うまくいかない「原因」ばかりに目がいってしまい、「解決」に目が向きにくくなってしまうのです。
そういう意味でも、症状や疾患の名前にとらわれすぎないよう、皆さまにとってより良い生き方や働き方を目指していただけるよう、この記事に願いを込めてきました。
それでは、今回はこの辺で終えたいと思います。
もし、悩んでいる方にとって、少しでもお役に立てたのであれば、大変幸いです。
それでは、また次回も、よろしくお願いいたします!
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