【連続対談企画#2】HSPブームを受けてばっしーさんは何を思う?
HSPとは、繊細で敏感な気質ということで、生きづらいという文脈で言葉が広がっていきました。
そして、1年前~半年前くらいに、テレビや芸能人がHSPを取り上げるようになり、HSPの知名度がかなり高まりました。
この状況を「HSPブーム」と揶揄する人も現れるようになりました。
この「HSPブーム」に対しては、HSPについて誤った認識が広がるなど負の面も見られるようになり、SNSを中心に問題視される声も多数あがりました。
そこでこの度は、この「HSPブーム」をテーマに複数の方々と対談をすることとしました。(前回の対談は、以下のリンクをご参照ください。)
【連続対談企画#1】HSPブームを受けて上戸えりなさんは何を思う?
2回目の対談は、ばっしーさんがお相手です。
ばっしーさんとの対談を踏まえ、人とのつながりやお金の流れの観点から、「HSPブームの問題点」について考察した内容を記事にまとめました。
「HSP」ブームをテーマに対談を実施することに至ったきっかけや趣旨については、以前の記事にまとめていますので、こちらも併せてご覧いただければと思います。
【連続対談企画 始めます】HSPブームを受けて発信者たちは何を思う?
対談のお相手(ばっしーさん)
・ばっしーさんは、HSPの方のコミュニティ活動(オンラインサロン)を精力的に実施されています。Twitterで見かける姿以上にお優しく、深く物事を考えていらっしゃる方でした!
・コミュニティを運営するにあたって、誰でも参加しやすいようにするための努力を強く感じました。また、コミュニティ活動で得られた知見を、外部に発信されるご活動もされています。
・私自身は半ば一方的に情報発信をしていることが多いので、「人とのつながり」に真剣に向き合っているばっしーさんに、お話をお伺いしました。
ばっしーさんのTwitter→こちら ばっしーさんのnote→こちら |
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対談内容のまとめ
(1)HSPブームで変わったこと
ばっしーさんのお話を受けて、以前に、私もHSPという言葉を自粛しながら発信をする決意をしたことを思い出しました。
私は2019年末に、こんなツイートをしました。
最近はHSPという言葉を、
積極的に使わないように
しています。これまで、自立に向けた発信を
目指してきましたが、その一方で
最近は、依存に力が向くような
ツイートが共感を得られる傾向に
なってきました。なので、HSPという言葉を
使うだけでも自立を遠ざける…
と思っている自分がいます。— ぽん乃助@繊細な人の働き方戦略家/ブロガー (@suke_of_pon) December 20, 2019
多くの発信者の思いとしては、HSPの方々に対して、「自分のことを深く知って生き方を良くしてもらいたい」「自立して納得した人生を送ってほしい」という気持ちが強い方が大半だと思います。
しかし、HSPという言葉の知名度が高まるにつれて、色んな意味がつきまとうようになりました。
私は、「あの人はHSPじゃない」とか「私はHSPだから〇〇はできない」とか、例えばそういったコメントを見ると悲しくなりました。
おそらく、ばっしーさんをはじめとして、色んな発信者がこういう思いを持っていたのではないかと思います。
「HSPブーム」を経て、HSPに関する発信をやめた方(HSPという言葉を使わずに発信をする方)は増えましたが、おそらくこうした葛藤が多くの発信者たちにあったんじゃないかと思います。
だけど、発信者同士がこうした葛藤を共有できずに、自分だけで悩んでしまって疲れ切ってしまった方もいたんじゃないかと思います。
私の活動はブログやSNSを通じての情報発信が主体なので、誤ったことや信義則に反することを発信したら、直接的に批判されやすい立場にあります。
だからこそ、私が情報発信するにあたっては、「情報の信頼性」をすごく意識するようにしています。
その一方で、ばっしーさんがされているコミュニティ活動(オンラインサロン)は外に見えない分、こうした努力は非常に見えづらいのではないかと思います。
また、「情報の信頼性」を高めれば高めるほど、使う言葉が難しくなってしまって、「親しみ」が持てない内容となってしまいます。
そんな中で、コミュニティ活動が外から見えないからこそ、ばっしーさんは「情報の信頼性」と「親しみ」を両立できるように、すごく頑張っていらっしゃる印象を受けました。
(2)HSPの方に向けた活動について
最近、SNSで情報収集をするという人も増えてきました。
しかし、当然ながらSNS(みんなに見える場所)で出てくる情報だけが全部というわけじゃありません。
ばっしーさんが仰っていたように、目に見えない場所だから出てくる言葉もたくさんあります。
こうした問題を取り上げた、直木賞を受賞した朝井リョウさんの小説『何者』の中のセリフを思い出します。
「だって、(SNSなどで)短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ」
「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う」
「ほんの少しの言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと」
引用(一部加筆):朝井リョウ(2012)『新潮社』新潮社
HSP界隈ですと、お茶会や交流会が行われていることも多いですが、HSPという言葉だけでは言い表せない悩みを抱えている人が多いからこそ、こうした悩みを外から見えない場で共有したい人もすごく多いのだと思います。
ばっしーさんをはじめとして実施されているコミュニティ活動は、こうした表出しない悩みを拾い上げる力があるのだと改めて認識しました。
ちなみに、ばっしーさんはHSPの方向けに質問されているということでしたが、次のような質問をされているということでした。
【ばっしーさんがコミュニティ内で聞いたことのあるご質問(例)】 ・これってHSPのいいトコロかも? ・SNSとどう付き合っていますか? ・「休む」ということについて、教えてください。 ・働く環境について、教えてください。 |
Googleの検索では、「HSP」と「悩みに関すること」を一緒に調べている人が多いことがわかりますが、ばっしーさんもこれまでされてきたコミュニティ内でのご質問の中で、悩みに直結する質問は回答が多く返ってくるそうです。
こうしたことを踏まえると、もしかすると「HSP」という大きな言葉に、一人ひとりがそれぞれ抱える悩みが搔き消えている問題もあるのかもしれません。
本ブログでは、繰り返し伝えてきている内容で恐縮ですが、メンタルヘルスの分野では、「事例性」と「疾病性」を切り分けて考えることが重要とされています。
「事例性」:具体的な困ったこと、たとえば、遅刻が増えた、身なりがだらしなくなった、書類の提出期限が守れなくなったなど、周囲からみて事実として捉えられる、いわば「困った出来事」があるかどうかという視点
「疾病性」:症状や病名などにフォーカスを当てて、対象を見ていく考え方
引用:健康保険組合連合会「働き盛りのメンタルヘルス vol.26」(アクセス日:2021年5月3日)
「疾病性」は医者などの専門家が取扱う分野なので、職場などの現場では「事例性」を重視して労働者の悩みにアプローチしていくことが原則です。
決してHSPは病気ではありませんが、今でもHSPを病気として捉えるようなことを聞くことがあります。
とはいえ、HSPを仮に本当に病気だと置き換えたとしても、本当に大事なのはHSP自体(疾病性)ではなく、HSPに伴って「具体的に何に困っているのか?」(事例性)ということになります。
ばっしーさんのお話を受けて、改めてこんなことを考えました。
心理学の分野では、「認知の歪み」という概念があり、人が不安になりやすい極端な思考のパターンを指します。
詳しく知りたい方は、Wikipediaの解説ページを見ていただくだけでも参考になると思いますが、有名な例を取り上げると、コップの中に半分入っている水を「半分も入っている」と思うか「半分しか入っていない」と思うかは、人の考え方次第であり、この状態を「半分も入っている」と感じられる方が、幸福感は高まるということになります。
そして、こうした見方を変えていくヒントを伝えていくことが、ばっしーさんや私のような活動者にできることなのだと感じました。
(3)HSPとお金について
ネット社会ではたびたび炎上することがありますが、特にお金にまつわることは炎上することが多いです。
行動経済学の考え方の一つに、「社会規範(社会貢献・信条 等)」と「市場規範(人気獲得・お金稼ぎ 等)」という考え方がありますが、この世界をうまく切り離せないとうまくいかないと言われます。
例えば、「HSPの人のために」(社会規範)という気持ちと「自分の人気獲得やお金稼ぎにHSPを使いたい」(市場規範)という気持ちが混在していると、受け手側としては胡散臭く見えるわけです。
しかし一方で、ばっしーさんの指摘どおり、発展的な活動をするためにはお金は必要になってきます。
先ほど説明した事例でいうと、水が半分入っているコップを「半分も入っている」という風に見方を変えるヒントを与えることは比較的容易にできますが、一滴の水しか入っていないコップを「半分も入っている」という風に見方を変えることは困難です。
実際には、コップに水を半分注がなければいけない場合もあり、こうしたことはお金を要する発展的な活動が必要なこともあります。
また、お金が発生しないと、いくら活動の内容が良くても持続しません。
私は、「社会規範」と「市場規範」を切り離すという発想しかなかったので、以前に公共福祉の文脈にHSPを落とし込むことの可能性を考察しました。(詳しくは以下のリンクをご参照ください。)
ただ、ばっしーさんが仰っていた「クラウドファンディング」という形であれば、内容に透明性をもたらすことができますし、お金を受け取る側・支払う側の両者にとって納得感が得られます。
コミュニティの活動の拡張性や持続性の観点から、「HSPとお金」に関する新たな可能性を感じました。
クラウドファンディング(英語: crowdfunding)とは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。不特定多数の人が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する。
引用:Wikipedia『クラウドファンディング』(アクセス日:2021年5月4日)
メンタルヘルスの領域においては、福祉分野とも関わるため、お金が発生するというのは非常にセンシティブな面があります。
私自身、うつ病にもなったこともあり、深刻な程度に心を病むという経験をしたことがあるのですが、心が弱っているときって何かにすがりやすくなるんですよね。
心が弱っているときに、「何かにすがって生きていければそれでいいじゃん」という人もいるかもしれないですが、私はこうした依存に近い状態は健全ではないと思っており、やっぱり自立を目指すことが心にとって健全だと思っています。
また、お金の流れをカリスマ的存在に一極集中させた場合に、適切に活動への投資に使われればよいですが、そうでない場合は活動の発展が望まれません。
そのため、ばっしーさんが仰っていたとおり、メンタル界隈においてはお金の流れとして「金銭的に余裕がある人⇒生活で苦しんでいる人」といった福祉的構造が生まれなければ、心の悩みを抱えている人の「自立」にベクトルが向かせるのは難しいのではないかと思いました。
(4)今後の活動について
私自身、今年に産業カウンセラーの資格を取得したのですが、その資格取得にあたって昨年は長期間にわたりカウンセリングの研修を受けました。
そこで、分かったこととしては、1対1の対話を何度も深めることによって、深い悩みが表出してくるということでした。
見た目ではすごく明るそうにしている人であっても、とても深い悩みがある方も多くいらっしゃいました。
そういうことを踏まえて、ばっしーさんと同様に、私も実際にお話をするということは本当に大切だと思いました。
改めて、ネットに表出する内容だけがすべてじゃないと、ばっしーさんとお話をしていて感じました。
ネット上では、対立構造のほうがたくさんの人に注目されやすい傾向にあるように思います。
だからこそ、ネット上においては、「一般の人は〇〇というけれど、私は●●だと思う」という意見のほうが注目がおかれる傾向にあります。
だけど、こうしたネット上の情報拡散の特徴が無益な対立を生むことがたくさんあります。
メンタル界隈においては、誰もが「前向きに生きていこう」という思いは変わらないんじゃないかと思います。
だからこそ、HSP界隈から協調的な活動を広げられれば良いんじゃないかと、ばっしーさんとお話をしていて思いました。
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おわりに
まずは今回、対談企画にご協力いただいたばっしーさんにこの場をもって感謝申し上げたいと思います。
貴重な時間を本当にありがとうございました。
今回は、ばっしーさんとの対談を踏まえ、人とのつながりやお金の流れという観点から「HSPブームの問題点」について考察してきました。
そして、ばっしーさんとお話をしていて、「表に出てくる悩みだけがすべてじゃない」ということは、改めて大事にしなければいけない価値観だと感じました。
さて、次回の対談は、HSP専門キャリアコンサルタントをされているみさきじゅりさんをお相手に対談していきます。
次回は、「HSPブームの問題点」について、異なる観点から考えていきたいと思います。
ぜひ、楽しみにしていただければと思います!
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